パンローリング社から出版されている「配当成長株投資のすすめ」を読んでみました。結論から言えばこれは良著であり、皆さんにご一読することをお勧めします。
この本の出版は2020年9月3日であり、私が最近用いている累進配当と言う言葉がまだ一般的ではなかった頃の考え方です。一方で、配当成長株と言うのは私が申し上げている累進配当と同じ概念です。まずはそこを確認しておきたいと思います。またこの著書は米国株について書いたものであり、私は日本株について累進配当の有効性を説いている。そこも異なる部分です。
私がこの本の中で1番響いたのは、第一章「なぜ人々は投資するのか」の47ページにある、次のくだりです。
「本書で私が最も主張したいのは、現在2.5%、3.5%、または5%の利回り(これらは向こう数十年で配当が8%、9%、10%、もしくはそれ以上に増大すると考えている)を持つ企業を見つける事は、向こう25年間で1,600%上昇する銘柄を選択することよりも、はるかに投機的ではない戦略だ」
既にご案内の通り、配当利回りの計算式は、分子が配当・分母が株価。つまり長期投資をすることで、分子が趨勢的に上がっていく一方、長期投資であれば買い値である株価は変わらない。その状況においてはこの本に書かれているとおり、現在5%の利回りのものが将来10%。もしくはそれ以上に増大するというのは正しい考え方です。ここに累進配当銘柄に長期投資をする価値が見いだせると考えます。
ちなみに、これは私が自ら計算した数字ですが、足元で5%の配当利回りの銘柄で、この銘柄の配当が年間10%増加していくとすると、複利計算の配当利回りは、10年で11.79%、 20年で30.58%、 25年で49.2%になります。累進配当銘柄に長期投資する価値は大きいことがわかります。
この本の書かれている「1,600%」という数値が何を意味するかは、よくわからない。深い意味はないのかもしれません。とんでもなく魅力的な銘柄であるということを、著書はユーモアをもって説明したいのかもしれません。それはそれとして大事なことは、この本においては配当成長株、私の言い方では累進配当株は、長期投資をすることで、とても有利な投資手法であるという点において、この本の著者と私の考え方は一致しているということです。私が推奨している累進配当銘柄への初期投資を側面支援してくれている本と理解します。繰り返します。ご一読をお勧めします。
浜口準之助
『配当成長株投資のすすめ 金融危機後の負の複利を避ける方法』が今回出版されたので興味本位に読んでみた。結論としては、読み応えのある骨太の本という評価だ。著者は全米トップランクの資産運用会社の創業者で、首尾一貫、配当成長株への投資を推奨している。
著者の主張として、「マーケットタイミング」や「流行の戦略」を追いかけるスタイルに対し、バックミラー越しにパフォーマンスを追いかけても、平凡でありきたりな結果に終わるだけで我々は運と実力を混同している、と切り捨てる。本来の株式投資の原点である、その会社の配当の持続可能性と配当が将来にわたって増大する可能性を見極める眼力が重要で安易なリターンは曖昧なものに過ぎない。永続するお金は時間をかけることで蓄えられるのだ、と説く。
色々なトーレーディング・スタイルはあるが、相場の荒波の中でもしっかり儲けるためには、投資する先の会社をよく研究し、マーケットタイミングではなく、時間を味方につけ安定的な配当が見込める株の複利ベースの長期運用が大切であると痛感させられる良書である。
炎のディーラー(金融機関勤務 投資歴25年)
長く配当を出し、増配をしている確固たる事業基盤を持った企業への長期投資によって資産形成をはかろうという、実に真っ当な主張の書籍。書籍の内容も、著者自身の姿勢も誠実さが感じられて好ましいと感じた。
苦言を呈すれば、本書の内容の生真面目さの反映という部分もあるのかもしれないが、翻訳が少々堅すぎ、また本来は適切な日本語に訳してほしい単語をそのまま英語をカタカナ表記にして用いているところがあり、読みにくさを感じた部分がある。カタカナ表記については、改訂時などにまた対応してもらえるとよい。
本書に示されている投資方法は短期的な売買で高効率に利益を挙げるような方法とも対極をなすものであり、本書では後者のような売買を戒めている。
結局、配当を増やしていけるような企業は経営が堅実であり、出された配当を再投資することで、さらに複利効果で利益が増大することもある。
本書を読んであらためて思い返したのは、かつて行っていた日本株の個別銘柄への「るいとう」という投資方法であった。毎月1万円など定額ずつ特定の銘柄の株式を購入していく積立型の投資方法である。
選択したのは、トヨタ自動車、山之内製薬(現:アステラス製薬)、武田薬品、ローム、キーエンス、ソフトバンク、オリンパス、NTTデータなど、以前からよく知られている当たり前の企業ばかりであったが、途中で積み立てをやめてしまったNTTデータ以外は、程度の差はあるが、すべて利益につながっている。ここでは、配当再投資の複利効果もあり、またドルコスト平均法効果もあり、企業自身の成長による株価上昇の効果もあったと考えている。
現在は、低コストのインデックスファンドの積み立て投資のことはよく取り上げられたりするが、個別銘柄への累積投資はあまり注目されていない印象がある。が、本書を読むと、あらためてその意味や効果を考えさせられるところがあった。
これは当然、米国株に限ったことではなく、上記のような日本株においても現在もあてはまるところは十分にあるだろう。
生真面目で、有益な書籍というのが全体の感想である。
ふしみん 50代 個人投資家
鳳凰堂のランダム・ウォーカー