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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/03/18 14:16, 提供元: フィスコ

クラウドW Research Memo(6):DX市場への参入及びM&Aにより、売上高300億円の達成目指す

*14:16JST クラウドW Research Memo(6):DX市場への参入及びM&Aにより、売上高300億円の達成目指す
■中長期の成長戦略

1. 今後の成長戦略
クラウドワークス<3900>は、2023年5月15日に中期経営目標「YOSHIDA300」を公表した。中期経営目標の定量目標は、売上高が300億円、EBITDA(Non-GAAP)が25億円、営業利益成長率が年10%以上である。うち、売上高は既存事業・新規事業180億円に加えてM&A効果120億円、EBITDA(Non-GAAP)は既存事業・新規事業16億円に加えてM&A効果9億円という内訳である。「YOSHIDA300」には、全社を挙げて売上高300億円にコミットするという意味が込められている。

中長期的の成長戦略は「クラウドワークス」を活用し、IT人材・コンサルティングサービスを提供することによりDX市場に参入し、シェアを拡大することである。

同社は2030年度のDX人材・DXコンサルティング市場のTAM※は31.3兆円と試算している。単に人手不足を解決するために顧客とフリーランスをマッチングするのではなく、コンサルティングを通じて顧客の経営課題に向き合い、工数配分・人的資本の課題を可視化したうえで業務改善ソリューション、その実行を主導する人材マッチング、「クラウドログ」などのITツール提供までを一気通貫で提案する体制を構築していく。

※ Total Addressable Marketの略。実現可能な最大市場規模。

DX市場には、既に大手ITコンサルティング会社やSIerなどが参入しているが、同社の相対的な競争優位性は「クラウドワークス」に登録している顧客数及び仕事を求める人材プールにある。2024年12月期末の登録クライアント数は前年同期比で約6.5万社増の102.1万社、登録ワーカー数は同80.6万人増の686.8万人と積み上がっており、うち約130万人がAIに精通した人材やエンジニア・デザイナーといった専門性の高いDX人材である。中小企業向けのサービスは大手競合がメインターゲットとしていないため、柔軟にサービスを提供することができる同社がシェアを拡大する余地があると見ている。大手企業の場合は、長年の取引関係があるITコンサルティング会社やSIerが重要な案件を担当することが多く、その牙城を崩すことは容易ではないかもしれない。しかし同社は、2024年にDX関連の受託等を行うソニックムーブ、(株)インゲート、(株)CLOCK・ITを子会社化したことに加え、案件の内容によっては同社のDX人材の活性化が見込めると見ている。案件の種類によっては同社のDX人材に一定の需要があると見ている。

単価面では、同社にはアカウントセールスによって深耕済の既存顧客4,815社、M&Aにより獲得した新規顧客791社の合計5,606社の顧客がいる。随時、事業領域を拡張してサービスのラインナップを増やしており、クロスセルを実施して1社当たりの単価向上を目指す計画である。

2. M&A方針及びグループインポリシーの策定について
同社は創業以来、クラウドソーシングの事業ノウハウを蓄積しつつ、数多くの企業のM&Aを通して外部成長も実現してきた。主なM&Aの成功例を以下に紹介する。

同社が2020年3月に当時子会社であった(株)電縁から買収した「イノピーエム」(現 「クラウドログ」)事業の売上総利益は、2022年9月期が231百万円、2023年9月期が421百万円、2024年9月期が618百万円と順調に拡大し、2024年9月期の配賦※前営業利益は134百万円と利益化した。

※ 複数部門に跨ってかかる人件費などの間接費用を一定の基準に沿って各部門に割り当てる処理のこと。

2023年4月に買収した、副業人材に特化したマッチングプラットフォームを運営するシューマツワーカーは、副業事業においてグループ間連携を行った結果、売上総利益は買収前の2022年9月期が359百万円に対し、2024年9月期には481百万円と拡大し、2023年9月期まで損失であった単体営業損益は同年9月期に24百万円の利益化を達成した。

2023年10月に買収した、エンジニア・デザイナーの常駐・派遣サービスを提供するユウクリは、同社の経営モデルを基に経営体制を強化したことにより、2023年9月期の売上総利益370百万円に対し、2024年9月期には462百万円と拡大し、単体営業利益も改善した。

いずれも同社とのシナジーにより利益化を達成して同社業績に好影響をもたらしており、同社のM&A戦略は成功を重ねてきた。同社のM&Aを推進する体制は段階的に強化されており、2024年9月期の資本取引契約の件数は6件となり、2023年9月期までの年間2件ペースから倍増した。同社はこうした成功例を基に、M&A方針及びグループインポリシーを策定した。

同社はM&Aの質を一定以上に保つために以下の方針を掲げており、基準を満たした企業を買収先の候補にしている。方針は「M&Aのターゲット」「M&A対象会社のハードルレート」「バランスシートの規律」の3つである。「M&Aのターゲット」は同社のクライアント・ワーカーのアセット、生産性向上のノウハウを活用することにより成長加速を見込むことができる企業であること、「M&A対象会社のハードルレート」は、EV/EBITDAマルチプルの設定・のれん後営業利益黒字・WACC(加重平均資本コスト)を超える投資回収率を36ヶ月以内に実現すること、「バランスシートの規律」は5つあり、株主資本比率・のれん/株主資本・ネットDEレシオ・NetDebt/EBITDA・ROEである。

また、同社は子会社各社に対して、売上・利益を増大させる経営ノウハウをポリシー化し、グループインポリシー「CW Growth Driver」を策定した。詳細は以下の5つである。
1) 同社のプラットフォームのクライアント及びワーカーのデータを提供することによりコスト構造が変化し、利益を創出する
2) エンジニアリングとセールスのいずれかに伸びしろがある場合、同社のノウハウ提供及び協働により両立を実現する
3) 子会社が運営するサービスについても複数サービスを一気通貫で提案する同社のアカウントセールス体制で提供し、1社当たりの単価向上により、事業収益拡大を実現する
4) 同社の生産性向上活動で蓄積したノウハウを提供することにより収益性の向上に寄与し、生み出した利益の再投資サイクルによる成長を実現する
5) 経営ノウハウの提供を通じ、再現性のある経営を実現する

同社はM&Aの体制を大きく拡充するため、2024年8月に執行役員4名がM&AとPMIの両面で緊密に連携する執行体制に移行した。加えて、M&A等の成長投資枠として120億円(現金及び預金からの拠出分20億円、借入枠100億円)の原資が確保可能となっており、同社はこれらのM&A推進体制の大幅強化、バランスシートの有効活用により、成長加速を目指す方針だ。

なお、同社は体制強化後にもM&Aを実施し、2024年10月にインゲート、及びCLOCK・ITをそれぞれ100%子会社化することを発表した。

インゲートは「“人”と、“IT”を支援する」をミッションとして、2006年の設立より人材紹介事業で企業の人事戦略の強化支援を、ITソリューション事業で上流工程から下流工程まで一気通貫の支援を価値としてサービスを提供している。両事業が採用や営業面で密接に連携しており、相互のシナジーを生かした利益率の高い独自の事業モデルを構築している。2024年3月期は売上高が前期比3.5%増の1,566百万円、営業利益が同4.5%増の299百万円と増収増益となり、純資産は1,060百万円となった。今回の取得費用は2,400百万円となった。

CLOCK・ITはシステムインテグレーション、Webアプリケーションの受託開発、自社メディアの企画・開発・運営等を手掛けており、2024年3月期は売上高が前期比29.6%増の2,146百万円、営業利益が同54.5%増の51百万円と、大幅増収増益となった。今回の取得費用は1,160百万円(純資産131百万円)となった。

インゲート及びCLOCK・ITをグループ会社とすることで、同社は全社売上総利益の約6割を占めるエンジニア・デザイナー領域において、より付加価値の高い提案が可能となる。また、同プラットフォームに登録しているフリーランス人材が両社の開発・運用案件に参画することで、同社、インゲート、CLOCK・ITそれぞれの成長が見込まれる。

インゲート及びCLOCK・ITの連結子会社化による連結業績への取込みは、2025年9月期第1四半期からとなる。両社の高い利益成長に加え、同社とのシナジーを勘案すると、早期にのれん償却もこなしての利益貢献が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)


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