本書は、経済動向を左右する極めて重大な要因として「中央銀行」に焦点を当て、緻密な分析・検証を行っている著作です。信用創造という、銀行にしか持ち得ない金融機能の経済における意義、そして、その方針を指導する中央銀行の力の絶大さを痛感させられます。
本書の内容が直接的に株式の売買に役立つということではありませんが、景気や企業業績の先行き、あるいはマーケットに資金が流入しやすい環境になるのか否かなど、大きな流れを捉えるうえで大いに参考になる指摘が多々あります。ヴェルナー氏の政策提言に賛同するかどうかは別として、経済全体、マーケット全体の予測をする際に重要な視点を与えてくれるのは確かです。
初版発行から5年が経過していますが、月日とともに風化する類の内容ではありません。むしろ、ヴェルナー氏がかねてからキーマンの一人と認識していた福井健彦氏が日銀総裁として、長らく続いた金融政策を転換しつつある今日、改めて読む価値のある1冊だと思います。