デフレスパイラルというか、お金の引き潮の時勢を反映してか、
お金儲けや株投資の本が書店の棚を埋め、いわゆる「金持ち
父さん」を目指す老若男女がワンさと群がっている。 しかし、小金持ちの一般庶民が大儲けしたという実話を満載
した書物には、なかなか出くわさないものだ。それもそうだろう。晴れがましいいはずだった21世紀も初頭か
ら景気は失速している。この未曾有の低金利と株価暴落の猛威を避けてか、恐れおののいた庶民のお金は、働きどころを失っ
て、銀行の「貸し金庫」の中に眠っているという、笑うに笑えない話も横行しているではないか。
ところが、2001年春、ひとり気を吐いた株式市場がお隣の
中国にあった。中国市場といえば「脆弱な経済基盤と後進性が
ぬぐえない」と敬遠する向きが多いが、海外からの資金や資本
をどんどん導入し、WTO加盟や北京五輪も追い風に世界の工
場地帯として飛躍しそうな勢いなのだ。
そして、2001年2月28日、ニューヨークや東京の株式市場
の暴落を尻目に、海外投資家向けに開設されている中国B株(
上海B株・深せんB株のふたつがある)を国内の投資家にも開
放すると中国政府が奇策を断行。いっきに30億ドルの外貨が
注ぎ込まれ、3ヶ月の間に株価が2倍から4倍に暴騰したのだ。
したたかななる中国の国内投資家は100万円を200万円、
いや500万円を2000万円にも増やしたが、もちろん、日本の
個人投資家のなかにも、少数ではあるが、あっという間に、10
00万円、5000万円を懐にしたちゃっかり組もいた。
ところがどうだ。中国株はどう買えばよいのか?という問い
合わせに対応できる証券会社は日本にはまだ数社しかない。
それほど中国株の知名度はまだ低いのだ。
というわけで、紹介したい「金持ちになる!魅力の中国株」
という本は、その中国株の急成長の3ヶ月前に出版されもの
だが、中国株のイロハから中国株売買のノウハウまでを事細
かなデータつきで解説した、素人でも分かりやすい格好の指
南書である。もちろん「中国株はなぜいま狙い目の成長株か」
をズバリ予言している。
内容が詳しいわけがある。筆者の阿部享士さんは、日本の大学卒業後に台湾の東呉
大学の大学院で修士課程を修めた、中国語ベラベラのまさに中国通。いまは、会員数1万人のアジア関連の投資情報会社
「日本事業通信網」の社長を若干35歳で采配しているから、その中国投資のレクチャーの的確さには定評がある。
日本株の急落や預貯金の低金利に泣いているあなたは、この著者がサラリと書いている、こんな中国株についてのイロ
ハの話を知っているだろうか?
「(アジア不況の影響があった99年期配当でも)、現金配当
は言うに及ばず、上海B株「上海華源」の5割を筆頭に1割、
2割の無償増資を実施した銘柄はざらにある」
「株の売買方式は日本株と変わりない。とくに中国B株は信用
取引、先物取引、ワラントといった複雑な取引がないので初
心者にも馴染みやすい市場だ」
さあ、お金がグローバルに駆け巡る時代だというのに、知っ
ているようで意外と知らないお儲けの情報が、これからはどん
どん増えていきそうだ。 投資は情報戦の時代である。「中国株なんてバクチ株で危ない危ない」と敬遠していた個人
投資家にも、なんだか気になって仕方がないという初心者にも、もうひとつ、目の離せない国際分散投資の指南書1冊とし
てお薦めしておきたい。 中国経済書というとやたらマクロな統計数字を並べ立てた
難解なものが多いが、この本は違う。
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