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私は商品先物業界に身を置く人間である。よって、今回の感想は、商品先物相場を念 頭に置いていることを、まずはご了解いただきたい。
商品先物取引員(受託会員)が発行する相場情報誌には、 「トレンドに従え」、「押し目を買え」、「戻りを売れ」 という、まことにありがたいアドバイスをたびたび目にする。 しかし、では、どうすれば、トレンドに従えるのか? 押し目というが、どこまで押せば押し目なのか、 戻りを売れというが、どこまで反発すれば、売るべき戻りなのか、 ということが具体的に述べられていることはまずはない。 押し目の観測も、戻りの観測も主観的なもので、ある面、感覚的に述べている感も否 めない。 しかし、「ヒットエンドラン株式売買法」のジェフ・ク−パ−氏はこれを具体的に説 明している。 同氏の売買手法は完全にテクニカルである。
まず、「トレンドに従う」ということに対してADX(ディレクショナル・ム−ブメ
ント)
の活用をまず第一に挙げている。
このADXは、RSI(相対力指数)で知られているW・ワイルダ−氏が考案したも
のと
して名前こそ知られているが、日本ではあまり使われてはいないようだ。
かくいう私も名前だけは知っていたが、具体的にマ−ケットにあてはめて見たことが
なかった。
確かに相場情報誌で、移動平均線やRSI、乖離率、ストキャスティックなどはよく
目にするが、
ADXに関してはほとんど目にしたことがない。
ちなみに、ADXに関しては、同書に計算方法がしるされているので、表計算ソフト
(エクセルまたはロ−タス)を使えば簡単に計算できるだろう。
また、時には10日移動平均線と50日移動平均線でトレンドを見ることもある。
さて、ジェフ・ク−パ−氏はADXを用意し、ボラティリティを勘案しながら、押し
目を確認して買い、戻りを確認して売るという方法を具体的に例示してくれている。
「押し目を買う」「戻りを売る」という主観的で無責任なアドバイスではない。
トレンドに従いつつ、トレンドの再開が継続されるのかどうかをボラテリィティで確
認して、その動きに乗るという、まことにわかりやすいトレ−ド方法である。
私は同書を読んだ時 『マ−ケットの魔術師』の中で、エド・スィコ−タが、”チャ−トを見るのは、ある意味でサ−フィンをするのと似て いる。大きな波をとらえるのに、ただ、いつそれが起こるかを感じ取り、タイミング良く行動に移せる力を持っていればいいだけだ”とインタビュ−で答えていることを思い出した。
ジェフ・ク−パ−氏はこれを具体的な形で例示してくれたのだ。
同氏は自分のトレ−ディングスタイルを短期売買型と称しているが、この方法は、商
品先物取引に参入する個人投資家の中期的売買にも適している思われる。
相場のトレンドはご承知のように、2〜3週間から数ヶ月、あるいは2.3年にわた
って継続することが
あるからだ。
商品先物相場では、活発な取引が行われているものは、金、プラチナ、ガソリン、パ
ラジウム、灯油、トウモロコシ、大豆、コ−ヒ−、ゴムなど10種類程度なので、常
時観察することが可能だ。
「ヒットエンドラン株式売買法」には取引手法が20種類紹介されている。 (もっともPART2のセカンダリ−に関しては株式に対する手法で商品先物取引には適 さない) 読者は、通読してみて、自分の経験に照らして、これはと思う手法をいくつか取り出 してみて、 過去のデ−タとチャ−トを参照しながら検証してみることが必要になろう。 全部の手法を各銘柄にあてはめることが理想であろうが、得意な手法をいくつかもの にしておくことの方が実戦では役に立とう。
ジェフ・ク−パ−氏も、PART1の4つの主要な取引戦略が”生活の糧”であるといっ
ている。
同書は相場経験者に関しては、自分の取引手法を再構築したり、再確認したりするの
に役立とう。
また、これから相場に参入しようと考えている人に取っては、良きテクニカル手法の
手引きとなろう。
なお、私はパンロ−リング社から既刊されている、『リンダラリ−の短期売買入門』、『ラリ−ウィリアムズの短期売買法』、『タ−トルズの秘密』を読了したが、今回読んだ
『ヒットエンドラン株式売買法』にも共通していることは、
「トレンドに従え」、「押し目を買え」、「戻りを売れ」、「ボラティリティ」とい
うことであった。
ロスカット(損切り)、マネ−マネイジメント(資金分配・資金運用)に関してもい
わずもがなである。
各ウィザ−ド達の手法は、当然ながら細部にわたって異なっている。 各自が、苦闘の末、自分にあった手法を編み出したのであろう。 読者も、これをもとにして研究することが可能である。 時間と労力をいとわなければ、あなたなりの手法ができあがるだろう。 たとえ、独自の洗練された手法にたどり着かなくても、投資成績は格段に向上するは ずだ。
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