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この書は十年以上前に書かれた名著 「生き残りのディーリング」を全面改定したも のである。前著に比べると分量も多くなり、単に売り買いの視点だけではなく、為 替、債権、株式の世界を色々な角度から眺めるエリアの広さがある。また、前著がプ ロを対象に書かれたのに対し、今回は一般投資家を対象としているおり、相場の考え 方についての教科書的な性格も持っている。もっとも、その分だけ冗漫になっている きらいがないわけではない。
しかし、章が進むに従って相場の本質へと次第に近づいていく。第3章「機先を制 す」では「逆張り」「順張り」から「利食い」「買い乗せ」と技法についてのコメン トが述べられる。そしてクライマックスは第4章の「見切りと再起」。傍観者ではな く実際にポジションを取っている実践者としても冷厳な真理が読む者を圧倒する。真 骨頂は67番の「損切りの徹底」だ。アゲインストのポジションは絶対持っては行け ないと、損切りの徹底を快刀乱麻を断つ如く言い切る。余りの感動にこの箇所は思わ ず全文を書き写してしまったほどだ。
生き残りのディーリングとは何か、それは損切りを早めにし、その損を機会利益の ためのコストと考えること。そして「3勝7敗のディーリング」で利益が出せるよう に徹底的に「損小利大」の真理を守るべく、血の滲むような努力で利食いを遅らせる ことである。そこにおいては、リスクとは避けるものではなくうまく管理するべきも のであり、コストとして考えることが大切となる。
実は、私は現実の売買においては「逆張り派」であり「ナンピン」を持ち技とする ので、ナンピンを滅多斬りしてけなすこの文章に、いささか気分を害することもあっ た。しかし、それは相場に対するスタンスの違いであって、この本が相場の本質に迫 る素晴らしい書であることを減ずるものでは全くない。
ディーラーは綱渡り師、一歩でも足を滑らせば「死」という極限状態を、「損切り オーダー」を命綱にして渡っていく。そんな生き方を「ケセラセラ、なるようにな る。先が見通せないから、相場も人生も刺激的なのです。」と楽観的にとらえる作者 に我々は限りない希望と勇気を与えられるのである。
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