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本書は、ギャンブル特にポ−カ−を通じての、人間の心理的考察、行動的考察につい てかかれた実践心理学ともいうべき書物である。トレ−ドの話やセックスの話は出て こないので、題名に惑わされるとがっかりするかもしれない。しかし、この書物がト レ−ドに携わる人を刺激するのは、本書の洞察がトレ−ドに携わる人の心理的状況の 変化をしっかり理解しているからである。
著者は人間の性質を13に分類しており、それぞれに対してポジティブな面とネガテ
ィブな面を解説している。人間には一本の主力となる基本的な性格がある。これが太い幹で、幹から12本の枝
が出ており、状況に応じてある枝が大きく顔を出すという。
そして、ポ−カ−の対戦の場面で、有利な人、不利な人、勝った人、負けた人の行動
や表情を観察して先の13の性質についていろいろな側面を述べている。
さて、ポ−カ−でなくトレ−ドに携わる我々は、これをどう生かせばいいのだろうか。
例えば、相場に曲がった時の自分の行動や心理的変化を振り返ってみよう。顔が強張
る、体が固くなる、のどが渇く、手に汗が出てくる、多弁になる、無口になる、いろ
いろな新聞や雑誌をひっくり返し、自分のポジションを支持する記事を探し出しては
安堵する、多くの知り合いに相場の見通し尋ねる、損切りしない理屈をあれこれ考え
る等々、思い当たる節があるのではないだろうか。(こんなアホな状態になるのは私
だけか?)
とりも直さず、自分の均衡の崩れた心理を防御するために、様々な性質が顔を出して
きて、それが行動に結びついているのだ。しかし、当事者たる自分には、自分の内部
でこのような変化がおきていることを認識できていない。
もし基本的な性質と心理的変化の知識があればどうか。自分内部の変化は、自分の苦 しさから生じていることを理解するだろう。「山中の敵を破るは易し、(己の)内部 の敵を破るは難し」とはよくいったものだ。ゴルゴ13のように、自分を第3者の目 で見ることができれば、安易な希望のもとで損切りをいたずらに引き延ばすことなど しなくなるだろう。
危機的な状況に遭遇したとき、どのような変化が表れるか、本書の基本的な13の性 質を読んで、自分に当てはめてみるとはっきりと把握できるだろう。 もとより、性質に善い・悪いはない。状況と場面に応じて、いろいろな性質が出てく るということだ。それを把握しておけば、安易に感情に流されることは少なくなるだ ろう。
読者は、自分の幹となる性質がどれに当てはまるのか、自分の側面としてどんな性質 が強くでてくるか、本書を読みながら把握しておくといいだろう。それには、先に述 べたように、うまくいっていないとき、自分がどのようになるのかを振り返ってみる のが一番だ。 そして、終わったトレ−ドを後から振り返るとき、再読するのに適した書物である。
(40代 男性 商品先物取引会社員)
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