人間は自分で自分を見失う瞬間がどうしても存在する。いわゆる「アツくなる」
というやつである。こんな時は自分自身で分かっているのにその行動を止めるこ
とはできない。場合によっては破滅まで... 投資家ならば市場から退場し借金を
背負うまでになってしまう可能性すらある。
株式投資を始めてからずっと自分で「アツくなる」ことを恐れていた。バブルに
一緒に乗って儲かってアツくなってしまう事、その逆に損がかさみ損を取り返そ
うとアツくなってしまう事。どちらも破滅に一直線である。
私は昔、パチンコで大当たりが来ない時に、ムキになってお金を入れ続けた時が
ある。財布のお金がなくなっても、銀行のATMからお金をおろし、更に続けてし
まう。そのときはまさしく体がアツくなり、自分で自分を見失っている状態であ
る。翌日になると、なんであんなバカなことをしたのかと反省するのであるが、
時すでに遅しである。
私は投資家としてその時がやってこないように、行動ファイナンスの本を読み漁っ
た。損大利小のプロスペクト理論やバイアスの存在など、参考になることは多かっ
たが、「なぜ人間はそのような心理状況に追い込まれるのか」といった真の原因
は分からなかった。
それは「夕焼けが綺麗であれば、翌日晴れる」といった所までの確率的な解説で
しかない。私は「なぜ夕焼けが綺麗なら、明日が晴れるかの」といった所まで理
解したかった。これが分からないと「アツくなる」ことから避けようがない。
そしてある時、この「影響力の武器」の本に出逢った事で全てが氷解した。
「なぜ負け続ける投資家はずっと負け続けてしまうのか」
「なぜ人間は破滅に陥るような投資法をしてしまうことがあるのか」
「なぜ買ってはいけないと分かっている株をどうしても買いたいと思うのか」
「なぜ人間は損大利小のプロスペクト理論に沿った行動をとってしまうのか」
投資心理について解説した本ではないのであるが、人間が陥りやすいワナについ
て、豊富な事例と様々な論文を組み合わせて丁寧に解説してあった。
私はアツくなる場面とその理由を知った事で、それを逆手に利用するイベント投
資に更に磨きをかけた。私は昨年、株式投資で奇跡的な利益率200%、資産を3倍
を達成した。はっきり言って「まぐれ」もいい所で、もう2度とありえない数値
であろうが、その助けになったことは紛れもない事実である。
この本がたとえ定価2万円だったとしても迷わず買っていただろう。これで大損
が防げて、なおかつ利益に結び付けられるのであれば安い買い物である。
ところでこの本を買う人に約束をして欲しい事がある。この本はあまりにも危険
な本で、詐欺師になろうと思えば、この本を熟読するだけでなれてしまう。詐欺
師となる事なく、自分そして世の中のために利用するということを誓って欲しい。