なかなか気が利いたタイトルである。ヨットは銀行家やブローカーのもの。顧客のものではないというわけだ。
つまりは、金融商品の取引には、時として(あるいは頻回に)過大なコストがかかるということを表現したもの。
これ以外にも、本書では、相場予想のことや投資信託のパフォーマンス等々、現在でも十分に通用する金融、
とりわけ証券業界の状況をユーモアたっぷりに、また皮肉っぼく描き出してくれている。
驚くのは、本書が最初に書かれたのは1940年で、内容自体はそこから大きく改変されたりしていないとい
うことだ。金融業界はそれから変わったのだろうか。変わったところもあれば変わっていないところもある。
私たちにできることは、なるべく低コストでの運用を心がけること、そのためには、誰かに運用してもらった
り、なんだかわけのわからない商品(例えば、未だによく売られている債券とオプションを組み合わせた売る側
は損をせず、買う側にリターンに見合わない過大なリスクを背負わせる妙は商品など)を買わないなど、しよう
と思えば可能なことがある。そして、これらの努力は、相場の動向がどうであろうと、確実に運用成績の向上に
貢献することになる。
この文体の軽さから、ちょっと「名著」とは言いづらいのだが、時を超えて現在でもその内容が十分に通用する
という意味で、本書は「名著」と言っていいのかもしれない。
ふしみん 50代 公務員