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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/03/24 17:06, 提供元: フィスコ

イノベーション Research Memo(6):主力事業の売上高は堅調に推移。新たな集客施策等に注力(1)

*17:06JST イノベーション Research Memo(6):主力事業の売上高は堅調に推移。新たな集客施策等に注力(1)
■イノベーション<3970>の業績動向

1. 2025年3月期第3四半期の業績概要
2025年3月期第3四半期の連結業績は、売上高で前年同期比15.3%増の3,892百万円、営業利益で同27.3%減の226百万円、経常利益で29.8%減の221百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で同87.6%減の25百万円となった。オンラインメディア事業及び金融プラットフォーム事業の双方で売上高が堅調に推移したものの、広告単価や顧客獲得単価の上昇という厳しい環境下において、全体として前年同期比で増収減益となった。具体的には、主力であるオンラインメディア事業においては、集客コストの増加が利益率の低下を招き、また金融プラットフォーム事業においては、デジタルマーケティングへの積極的な投資が同様の影響を及ぼした。売上高はITトレンド及びIFAの拡大により増加した一方、売上原価も広告単価や顧客獲得単価の上昇により増加し、加えて販管費もマーケティングコストと研究開発により増加した。なお、安定した財務体質の維持に努めつつ、将来の成長を支えるための投資にも積極的に取り組んでいる。加えて、新たな集客施策への注力及び広告効率の改善に取り組むとともに、営業を中心とした人材採用の強化も実施された。また、前年同期には実施されなかった、オンライン展示会「ITトレンドEXPO」を開催したことがオンラインメディア事業の売上拡大に寄与した。なお、1回の展示会開催による平均売上高は2〜3億円と同社の売上規模に比べて大きく、開催の有無やその規模が四半期業績の大きな変動要因となる点に留意する必要がある。なお、同社では2025年3月5日〜7日に「ITトレンドEXPO2025 Spring」を開催した。

2. 事業セグメント別動向
(1) オンラインメディア事業
オンラインメディア事業は、売上高で前年同期比20.4%増の2,826百万円、セグメント利益で同9.4%増の1,027百万円となった。全体として前年同期を上回る成長を遂げており、なかでも「ITトレンド」はマーケティングへの積極投資が奏功し、同21%増という高い売上成長を達成した。また、日経BPやbizplayといったほかのサービスも、大手ベンダー広告の回復などを背景に堅調な推移を見せた。広告単価の上昇による原価高については、各サービスにおいて適切に吸収され、全体としての成長を支える要因となった。なお、KPIに着目すると、ITトレンドにおける来訪者数は第1四半期から連続して過去最大を記録し、動画メディアであるbizplayにおける会員ユーザー数も堅調な伸びを維持している。さらに、主力であるITトレンドでは、掲載製品数が3,583製品へと同10.5%減となったものの、来訪者数(延べ人数)は15,450,698人に達し、同1.9%増となった。SaaS業界では、企業のDXやAIに対する高い関心を背景として、新規参入企業が増え続けている。各社ともトップラインの拡大に注力しており、リスティング広告やSEO、展示会、テレマーケティングなど多様な手法を活用して顧客を獲得している。近年、SaaS業界の顧客獲得コストは上昇傾向にあるが、同社のサービスは比較的リーズナブルな価格帯で提供されており、今後も成長の余地があると弊社では考える。

加えて、前年同期には開催されなかった「ITトレンドEXPO」の開催が、オンラインメディア事業全体の売上高を押し上げる原動力となった。「ITトレンドEXPO」はコロナ禍において立ち上がったオンライン形式の展示会であるが、オフラインでの展示会が回復している現在も参加者数は減ることなく増加している。クライアント側にとってオンライン展示会は、会場手配や設営、人員配置といった負担がなく、運営の手軽さからリピート利用が多い。一方で、オフライン展示会にはリアルで営業できる強みがあり、直接的な商談の場としての価値がある。そのため、どちらが優れているという単純な比較ではなく、両者の使い分けが進むと考えられる。コロナ禍の終息以降も、オンライン展示会の来場者が減ることはなく、むしろオフライン展示会と使い分けることで活用される場面が増えていくと弊社では考える。

(2) ITソリューション事業
ITソリューション事業は、売上高で前年同期比7.4%減の301百万円、セグメント利益で同27.8%増の102百万円となった。

主力製品である「List Finder」に関しては、2020年3月期よりアカウント数拡大戦略から収益力強化への転換が図られており、これに伴い、アカウント数は385件と前年同期比14.4%減となったが、運営効率の向上及び価格改定の効果が現れた結果として、平均請求金額(ARPU)は上昇した。一方、「コクリポ」については、ウェビナーツールとしての競争力は「Zoom」や「Google Meet」「Microsoft Teams」など外資系サービスの普及により厳しい状況が続いている。今後はSaaSモデルによるツールの販売ではなく、ウェブセミナーの企画・運営を軸にした事業展開を模索している。

(3) 金融プラットフォーム事業
金融プラットフォーム事業は、売上高で前年同期比8.9%増の764百万円、セグメント損失は134百万円の(前年同期は1百万円の損失)となった。主力であるIFA事業においてデジタルマーケティングを併用した営業手法が奏功し、預かり資産残高の増加に寄与したが、デジタルマーケティングへの積極投資が大きなコスト要因となり、前年同期比で増収ながらもセグメント損失が拡大した。IFAの雇用形態については、大きく分けて正社員と業務委託の2種類がある。例えば、アイ・パートナーズフィナンシャル<7345>をはじめとする多くの企業では、業務委託のIFAが中心となっている。この業界では、採用を拡大するために高い業務委託マージンを設定するケースが多く、その結果として一部の企業では収益を圧迫することも少なくない。一方で、正社員型のIFAにおいて収益を伸ばしている傾向も見られており、同社では正社員と業務委託を組み合わせたハイブリッド型の運営を最適化することが重要だと考えている。さらに、2025年3月期よりグループ会社のInnovation IFA Consultingを100%子会社化したことで、経営の改編を進めている最中であり、デジタルマーケティングをいかに効果的に活用するかが今後の課題となる。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)


《HN》

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