まず、本の帯に『夜眠れぬ経験や神頼みをしたことのあるすべての人にとって必読書!』とあったので思わず手に取ってしまいました。一読して、プロを含めた全ての投資家ばかりでなく、これからトレードを始めるビギナーにも必読書と感じた数少ない本です。
よく言われるのは『勝ち戦よりも負け戦から学ぶことが多い』ということです。特に相場の世界での勝ち、大儲けは単なる偶然の所産であるケースが少なくありません。(つまり、大きなポジションで挑んだ結果がたまたま連勝となっただけ)これは、過去の大物相場師の多くが晩年には大きな損失を被って市場から去ってしまったことが全てを物語っています。
本書は目次を読むだけでもその価値がわかります。第24章の目次で『大トレーダーが成功した方法よりも失敗から学ぶことのほうがたくさんありました』と記されているとおりです。本書の経験談を読むとまるで自分自身の過去の失敗の日記を読むような気持ちになりました。
勝ちに驕っていた頃は『お金を印刷するのも同然でした』、まさに毎日の値洗いでの評価益は麻薬のように理性を狂わせるものです。そして調子に乗って『エンジン全開のトップギア状態のままでいて、スピードを落とすのを忘れていたんです』、と誰もが経験する、儲けている時の精神状態とポジションは万国共通のものであることを改めて教えてくれます。そして、、、『四日間稼いだあと、五日目にそれを全部なくしてしまうんです』という経験もやはり万国共通。
思わず笑ってしまったのは『第31章 失ったのと同じ仕方でお金を取り戻したいと思ったんです。つまり、今すぐに』の記述でした。
これが全ての投資家達の共通の心理、損をした時にあせって無理なトレードをする誘惑、これこそ必ず破産に導くマーケットの悪魔の正体でしょう。
投資関連の本は多いですが、これほど多くのプロ達の失敗談を、実にリアルに正直に記述したものは本書をおいて他に無いはずです。一般的に『損切りが大切』と言われますが、実行はなかなかできないものです。本書は目次を読むだけでも過去のトレードの反省と『損切り』の重要性を再認識できるでしょう。
本書の35人のスーパートレーダー達の失敗談は、個人投資家が自己流のトレードで損失を繰り返して学ぶよりも、多くの教訓を教えてくれます。言わば相場で損をする本当の理由を教えてくれる本です。
個人的には毎日最低でも目次だけは目を通し、経験談を思い起こすことを習慣にしています。その習慣のおかげで資金管理での失敗がかなり少なくなりました。一般的に投資技術の本は寿命が短いものですが、トレーダーの精神状態を生々しく描写した本書は、生涯の座右の書として初心者〜プロまで、全ての投資家にお勧めしたい一冊です。