‘やはり’「普通の人が勝ち抜くのだなぁ」と改めて認識させてくれる本です。
昔、某雑誌で有名作家二人による「普通の重要性」という対談がありました。「有能な作家はいたって‘普通’な人が多い」「変人であることがメリットになることはほとんどない」「僕たちは普通だよね」「そうそう。普通な人が生き残る」希代の個性派作家と評される二人から出てくるその言葉に衝撃を受けた記憶があります。
――百年に一度の大相場を勝ち抜く方法――
奇をてらった風な題名ですが、本書にも、上の対談と同様「普通の重要性」が淡々と描かれています。常識があり、平均的な人の思うところが分かり、分析にも思想にも偏向がない。頑固者でもなければそこまで優柔不断でもなく、他人の意見を許容しつつも自分の価値観を持っている……。相場では、そんな当たり前のことが大切だと書いてあるのです。
きっと著者の言う「普通」とは「バランス感覚」のことなのでしょう。
私は新聞社に勤めていた時代に200人ほどの投資家にインタビューした経験がありますが、そういえば、中長期的に勝つ投資家は、往々にして「バランス感覚に長けた」でした。変な人は、ある部分では思いっきり勝つが、負ける時も大きく負ける。そんな投資成績を持つ人が多かった記憶があります。
しかし、バランス感覚とは、日々ずれていくもの。
毎日相場を張り、緊張感とストレスに喘ぐ投資家は、ときにバランス感覚を失い、成績を落としがちでしょう。
そんなときはパソコンから一時離れ、この本を手に取ってみるといいかもしれません。