本書は、グスコー出版の『バビロンの大富豪』のオーディオブックCDである。内容は、書籍とほぼ同じで、プロローグなどを除くと、9つの話(第1話から第9話)で構成されている。
各話は、聖書のような寓話(物語)形式となっており、子供でも理解できるほど平易な表現で語られている。しかし、話の内容は、平易な表現とは裏腹に、シンプルながら深遠だ。
全ての話で一貫して語られることは、貯蓄・勤勉・安全の大切さ。一言で表せば非常に簡単なことを、様々なストーリーを通じて、身にしみて理解させ、次の行動に移せるよう工夫されている。
本書の大きな特徴は、オーディオブックという一風変わった媒体を利用している点。オーディオブックの欠点は、音声による伝達のため、黙読に比べて時間がかかることだが、本書の場合は、逆説的だが、それが利点になっている。
本書の内容は、シンプルかつ至極当然なことだけに、一読しただけで誰もが納得するだろう。しかし、時間をかけずに話を通り過ぎると、自分の頭に残らず、行動にも反映されない可能性が高い。他者の声によって語りかけられることで、ある種の刷り込み効果があるのだろうか、聞き終えた後でも詳細な部分まで頭に残るし、本書の内容に反する行動を取ろうとした途端、本書が説いている富を支配するための「あるべき姿」に戻ろうと、愚かな行動を控え、「あるべき姿」を目指すようになる。小さい頃に、親・兄弟から授かった躾に似た効果を得る上で、オーディオブックという媒体が効果を発揮している。
私は、本書を全て携帯電話にダウンロードし、電車などの移動中に聞いたほか、自宅でもPCでの作業中などでBGM代わりに聞いた。全てを聞き終えたのは1週間程度だった。当初は、本書がCD9枚組み、ということもあり、聞き終えるだけでも精一杯と思っていたが、気がついたら終わっていた、というのが実感だ。
唯一残念だったのが、トラックの区切りが少ないこと。1トラックは15分程度だが、電車での移動は、早いと5分程度のこともあり、トラックの途中で音声を止めてしまうと、再度冒頭部分から聞き直すことになるか、早送りしなければならない。話の流れを止めたくない、という配慮があったのかもしれないが、もう少し短時間で区切ってくれれば、より効率的に聞くことができたと思われる。