投資ノウハウを直接的に解説する本ではないが、気軽に楽しんで読むことができ、それでいて「確率で考える投資」を理解するのにうってつけの本である。
2002年頃のメジャーリーグを舞台にしたノンフィクション。選手の平均年俸がヤンキースの1/3でありながらプレーオフ進出という、オークランド・アスレチックスが成し遂げた超効率経営の秘密が明かされていく。様々な読み方のできる本だが、私には科学的な野球理論の成功事例という見方がしっくりくる。野球というものが投資対効果という視点から、様々な数字に分解されていく。その結果、我々の知っているそれとは、全く違ったメジャーリーグが見えてくるところが面白い。
平易な表現だが、ところどころに確率論や統計学の典型的な考え方がちりばめられており、それが土台になって、従来の野球界の常識とは全く異なる独自の野球理論が組み立てられている。
投資に限らずどの世界にも、真(まこと)しやかに語られる多くの「迷信」があるが、それらを客観的に見直せば、自然に勝機が見えてくることがよく分かる。