誰もが「オープンレンジブレイクアウト」という言葉に惹かれてしまうでしょう。しかしながら、本書の主旨は「価格だけが重要ではなく、時間はそれ以上に重要である」ということでしょう。時間と価格の関係は細かく調査をすれば膨大な作業量になります。もちろん著者の実践での感覚もあったと思いますが、それらを見事にまとめあげた最良の事例として感心させられる内容です。
オリジナルロジック作成の参考にしたい方からすれば、資料に物足りなさを感じるかもしれませんが、本書に紹介されているロジックから様々な亜種を作り出すことは難しいことではないでしょう。ロジック説明部分だけではなく、著者の感覚と体験談部分もロジック作成のヒントとして存分に活用できる書籍と思います。
もちろんロジックのヒントとして役立つだけではなく、著者が紹介する様々な体験談も面白く読めます。私自身も共感する場面や再認識させられる場面があり、同時に懐かしく思う場面もありました。今でこそ何の感動も無く、プラットフォームを用いて言語ベースでストラテジを組み上げ、様々な時間軸を長期間かつ正確に計測できてしまいますが、最初のプラットフォームを手に入れた時は、それは楽しく希望に満ち溢れ、Excelで不自由したn分足のオープンレンジブレイクアウトを計測し続けた時代があったことを思い出しました。最初は「時間」を単なるレンジ形成のフィルターぐらいにしか活用しなかったため、幾度か失敗を積み重ねましたが、計測を積み重ねるにつれ「時間」の使い方を掴んでいくプロセスは本書の流れに近いものがありました。
オープンレンジブレイクアウトは、「価格と時間を扱う仮説と検証」のプロセスを鍛えるには最適な題材と思います。その意味では本書の内容の濃縮度合いは丁度良いぐらいではないでしょうか。