退廃したローマ帝国を滅ぼしたヴァンダル族のように、硬直化した金融システムを破
壊してゆくトレーダーたち――。
特に20代の業界関係者の方には、ぜひ読んでもらいたい本です。
本書の面白さは、以下の三つの要素が、「リスク」を隠れテーマに、うまく絡み合っ
ているからではないかと考えています。
- 新時代を創造する尖兵として、時代錯誤のシステムを攻撃するトレーダーたちの
生き様。
- その新時代(金融オプション、通貨市場、金融先物、カントリー・ファンドな
ど)を創造したイノベーターたちの活躍。
- その歴史的、時代的必然性についての、詳細かつ分かりやすい解説。
例えば、第5章の「東方の日没」にある、恐喝まがいのことまでしてリスクを無視し、
時代の流れを食い止めようとする日本の大蔵官僚や東証と、
追い風に乗るシンガポール取引所やアメリカン取引所、トレーダーたちとの攻防は、
外圧という歴史的背景とバブル期の時代背景を踏まえて立体的に理解することで、
読み応えのあるドラマに仕上がっています。
発行されたのは94年ですから、情報としては物足りないかもしれませんが、
実は各章の終わりが、その後の焦点を予見させる展開となっています。
王冠を勝ち取ったヴァンダルたちが既得権者と化し、時代の流れに抗し始めたとき、
また新たなヴァンダルからの、容赦ない攻撃にさらされるようです。
LIFFEから独国債先物の流動性を奪還したのは、Eurexというドイツの電子取引所でし
た。
(ちなみに、かつてシカゴ市場のT-Bondピットに君臨したトム・ボールドウィン氏は、
1年前にピットを降り、「電子取引なんか、つまんなーい」と語っています…)
※トム・ボールドウィン氏・・・・・・マーケットの魔術師のひとり
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