円債関係の分析をしている自分にとって、この『日本国債』という本はある面でショックでした。
たしかにストーリーとして日々、日本国債がトレードされる過程ではさまざまなドラマがありますが、この小説はそうした日常性のドラマの中で、総理大臣の思惑まで入る壮大な形でのストーリー展開で、一見すると日本国債とは関係のないものでしか感じられないようなことではあるが、その実、底辺部分ではつながっていた――こうした発想の豊かさにショックを受けたのです。
マーケットに関わっていると、日々実感することですが、個々の経済事象にはすべてといっていいほど物語があり、ストーリーがあるのです。
そのストーリーを経る過程でエネルギーが溜まり、ある日突然爆発という形で、なんらかの変動があるわけです。この小説の中での突発的な事象とは、「暴落」というものであり、この暴落に至る過程を随時溯る形でストーリーが展開していくことになり、その中で政界との絡みにまで話が発展していくことになります。
この本をお薦めする最大のポイントは、一般の方が、「日本国債?」という疑問に答えるだけの解答を、小説のそこかしこにちりばめられている点です。日本経済を勉強するうえで、とくに経済学部の学生の方には、必読書といっても過言ではありません。
“日本国債”をより身近なものとして小説という形で紹介された本としては、過去に類をみないほどの出来ばえといえ、学生の方にかかわらず、日本経済を勉強したいと思っている方にはぜひ積極的に読んでいただきたい一冊です。マーケットとは何か、その胎動・変化を、この小説を読む過程で体感できることでしょう。
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