金融が経済を支配する現代においては、貿易や直接投資等の実体経済以外で1日
に1兆ドル(120兆円)もの短期的投資・投機のお金が世界の市場を駆け巡っている
といわれている。その中で、我々が投資で勝ち残っていくには、マクロ経済や個別
企業ミクロのファンダメンタルズ分析やチャート等のテクニカル分析の知識のみで
は不十分となっている。なぜならば、いくら数字上の定量的分析を綿密に行ってい
ても、国際情勢の大きな変化という定性的要因により相場は大きく変動するからで
ある。冷戦終結以降の1990年や2000年の日本のバブル崩壊の事例を見ても分かるが
、歴史的にも大きな変化の起点にある今においては、歴史的繋がりも含めた国際情
勢の大きな流れを考えた投資戦略が重要であろう。
本書は、儲けるための手法を実践的に解説した本ではないが、綿密な調査の下で今
、米国を中心とする金融支配の構造が明らかにされている。ただし、巷にある同種
の本とは異なり、事件の起こった時点の話を論ずるのみならず、その事件が起こっ
た背景を歴史的に溯り、関係する人物の経歴、人脈を織り交ぜて事件を分析してい
る。巨額の富を持った一部分の人間が人脈の上でどう繋がっていて、その人間達が
、金融を中心に石油、ガス、電力、防衛、バイオの産業でどう動いているか。さら
に政府とその関連組織と産業界がどう繋がって、世界経済を動かしているかが理解
できる。
文章は複雑に絡み合った登場人物を織り交ぜて解説しているために分かりやすい
とは言い難いが、本書は国際情勢を踏まえた今後の投資戦略を練る上で参考になる
書であると思われ、ここで推薦したい。
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