筆者が繰り返し確認することは、トレーディングはゼロ・サム・ゲームではなく、マイナス・セム・ゲームだということ。なぜなら、ブローカーや取引所、投資アドバイザー、そしてこういった本やセミナーが我々の大事なお金を抜き取ってゆくからである。儲けようと思ったら、まず先に彼らを養わなければならないから、平均より優れているだけでは十分ではなく、抜きん出て優秀でなければならない。
だから「まずサバイバルすることを第一の目標とせよ」である。マーケットにおいてサバイバルすることが如何に重要か。最後まで読まれた方は、債券ディーリングルームで有名な久保田 博幸氏の『マーケット・サバイバル』を読みたくなるだろう。
「自分が損したのは、トレーディングの秘訣を知らなかったからだ」との幻想には確かに多くの人が取り付かれているかも知れない。だが、敗者は「資金が不足している」のではなく「精神が発育不良」と言われては赤面するしかない。
この本は、テクニカル分析の教科書的な書籍であるマーフィーの『先物市場のテクニカル分析』の後に読むのが適当かも知れない。
単純移動平均(SMA)ではなく、なぜ指数平滑移動平均(ESMA)を使うのかなどがよく分かる。その他、サイクル、MESA、MACDヒストなど。特にMACDヒストグラムはそろそろ日本でも流行りそうな気がする。気にしておいた方がいいだろう。3段階スクーリングにおいては、逆指しを用いた具体的な指値の入れ方が学べる。
非最適化して、悪いコンディションの下での運用成績がどのようであったかチェックする。良いシステムができたら、あまりそれをいじりすぎてダメにしないようにする。こういうことはテクニカルの上級者の方々にも参考となろう。
敗者にも勝者にも、初心者にも熟練者にも、精神面からテクニカル面から、トレード行う多くの人に有益な本だ。
ただ、翻訳で「ブル」「ベア」が多用されているのが辛い。その気持ちは分かるが「買い方」「売り方」とした方が文章は読みやすかっただろう。また、括弧付き英語表記が望ましい箇所も多くあった。その辺は惜しい。
私もこれからはトレーディングを行う朝にこうつぶやこう。「おはよう。私の名前は真鍋。私は敗者である。…」
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