フライング・ハイ――エアアジア、F1、プレミアリーグ
トニー・フェルナンデス,
堀川志野舞
パンローリング
四六判 312頁 2018年9月発売
本体 1,600円 税込 1,760円
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約20円(1MYR)で買収したエアアジアを
低コスト航空の雄に育て上げた実業家
アジア初の低コスト航空会社の起業で成功を収めた後、F1チームや英国プレミアリーグのサッカークラブをオーナーを務めるなど、次々と夢をかなえてきたトニー・フェルナンデス。
挑戦し続けるビジネス・リーダーが、幼少期からの今日に至る自身の歩みとともに、不測の悲劇への対応やビジネスの原則について綴った、貴重な半生記。
本文より
2001年12月8日、デューデリジェンスが完了した。ついに契約書にサインをして、私たちは航空会社を引き継いだ。ペンと書類を片付けると、DRB-ハイコムの最高経営責任者は、こっちを向いて眉を上げてみせた。おかしいなと思いながらも、私はほほえんだ。すると、彼は手のひらを上にして右手を差し出し、言った。「じゃあ、払ってもらおうか」
「えっ?」
「きみとディンに1リンギットの貸しがあるぞ」
私は声を上げて笑い、財布を取り出した。だが、現金がない。ディンを見る。彼も尻ポケットから財布を出したのだが、中をのぞくと、肩をすくめた。
「貸してもらえるかな? 手持ちの金がないみたいで」
笑いが収まると、CEOは1リンギット紙幣を見つけてこちらに渡し、私たちはそれを仰々しくお支払いした。これでエアアジアの買収が完了したのだ。あのときの金を、ディンと私は返してない気がする……つまり厳密に言えば、私たちはこの航空会社をタダで手に入れたわけだ。
それからというもの、エアアジアの経営は、これまでに乗ったことがないほどスリリングでヘトヘトになるジェットコースターみたいなものだった。私たちは経験と勘を頼りにするしかなかった。たしかにスタッフは自分のやるべき仕事をしっかり把握していたが、経営する私たちの側は、すべてのプロセスを結びつけなくてはならず、スムーズに事を運べるようになるまでには、少し時間がかかりそうだった。
著者紹介
トニー・フェルナンデス(Tony Fernandes)
1964年、マレーシア生まれ。少年の頃はパイロット、カーレーサー、サッカー選手が夢だった。12歳のときにイギリスの寄宿学校に入り、スポーツの才能を発揮。卒業後は音楽業界を志し、リチャード・ブランソン(Richard C. N. Branson)との出会いによりヴァージン・コミュニケーションズ、次いでワーナーミュージックに勤務。退職後、偶然のきっかけから航空業界に興味をもち、アジア初の低コスト航空会社を起業。大成功をおさめた後、F1ロータスLotusや英サッカー1部リーグのQPR(Queens Park Rangers Football Club)チームオーナーを務めるなど次々に夢をかなえる。大英帝国勲爵士、レジオンドヌール勲章、タン・スリとダト・スリの称号、を授けられた。2010年にフォーブス・アジア版の「ビジネスマン・オブ・ザ・イヤー」、2015年には米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」に選出された。2016年には「アジア最優秀起業家賞」を受賞。現在もエアアジア・グループのCEO兼QPRのチェアマンを務めている。
■著者の言葉
事業を立ちあげるとき、何を投げかけられるかは決してわからない。エアアジアの初期の頃をふり返ると、どれだけ多くの予期せぬ大問題に直面し、それを乗り越えてきたか、思い出しても呆然としてしまう。
昨今では、粘り強さと決断力という美点が甘く見られている。近道しようとするミュージシャンやサッカー選手を見てきたが、近道などというものはない――本当だ。
人生に訪れたどんなチャンスも逃さず掴み、最大限に活かすことで、私は子どもの頃の夢をかなえたが、まだまだ挑戦することは山ほど残っている……。
成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。たとえ失敗しても、私は挑戦しつづけるだろう。決して諦めなければ、達成することに終わりはないのだから。
目次
まえがき 夢が詰まったおやつ箱
第1章 少年時代
第2章 イギリスへ
第3章 荒野の時代
第4章 音楽業界の仕事
第5章 思い切って夢を見る
第6章 高く飛ぶ
第7章 惨 事
第8章 エアアジアの旅路
第9章 グラウンド・スピード
第10章 ウィー・アー・QPR
第11章 最高のゲーム
第12章 チューン・アップ
第13章 「アプレンティス」の冒険
第14章 Now Everyone Can Fly(誰もが空を飛べる時代)
謝 辞
(ウィザードブックシリーズ267)
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