決算書は難しい? (「まえがき」より)
今、本書を手に取られている皆さんは、おそらく次のような悩みをお持ちではないでしょうか。
入門書は読んだものの、
実際に決算書を目の前にしたとき、
“何”を“どう分析”すればよいのかがわからない
株式投資では、決算書の分析ができるようになって、はじめてスタートラインに立つことができます。なぜなら、決算書を読めなければ、自分なりの投資判断を行うことができないからです。
世の中には、いいかげんな投資情報があふれています。中には、決算書を曲解しているものも見受けられます。そんなものをつまみ食いして儲かるほど、株式投資の世界は甘くありません。
では、決算書をマスターするには、いったいどうすればよいのでしょうか?
入門書を読んでいるだけでは眠くなってしまいますね。もっと良い方法は、実戦に近い形で「自分で考え、手を動かしてみる」ことです。
本書『角山智の銘柄分析力“強化”トレーニング 決算短信表紙、セグメント情報、損益計算書編』の狙いは、演習問題にチャレンジしながら決算書の理解を深めていくことにあります。
決算書の「基本中の基本」である決算短信表紙、セグメント情報、損益計算書について、基本的な説明は最低限にとどめ、皆さんに多くの問題を解いてもらうことにしました。
あくまで、投資家の目線にて「このケースでは、どういった見方をすればよいのか」を考えることにより、決算書を分析したうえで、自ら投資判断を下すことのできる投資家へのレベルアップを目指していただきたい、そう願っています。
本書の構成
本書の構成については、次ページの表にまとめました。
第1章から第3章までは、決算短信表紙の見方についてです。
ベテランの投資家であれば、表紙を見ただけで、ものの数秒で投資判断を下せるものです。
ここでは、経営成績5問、財政状態5問、キャッシュ・フローの状況4問の問題を解くことにより、そのエッセンスを学べるようにしました。
第4章では、セグメント情報を取り上げました。上場企業は複数の事業部門を抱えており、海外展開を行っていることも珍しくありません。
こういったケースでは「どの事業が、どの地域で」収益を上げているかについて把握しておくことが大切です。5問の問題にチャレンジしてみてください。
第5章では、損益計算書を見ていきます。損益計算書では、売上原価や販管費の比率、営業利益の水準について、業種や企業による違いを認識しておくことが大切です。また、営業外収支や特別損益に問題点が含まれていることもあります。
仕上げとして、6問の問題を通じて、損益計算書に対する経験値を高めていきましょう。
なお、いわゆる財務3表のうち「損益計算書」と「キャッシュ・フロー計算書」については、続編での解説を予定しています。
自己紹介
最後に、簡単な自己紹介をさせてください。
私は、ある建築資材メーカーの情報システム部門に勤めていました。17年間にわたり、SE(システム・エンジニア)としてサラリーマン生活を送ってきました。今は「角山オフィス」として独立開業しています。
将来の生活への不安からはじめた株式投資も、もう14年目に入ります。平均株価ベースでは、元本が半分近くまで減ってしまう厳しいマーケットの中を、個人投資家として生き残ってきました。
何とかやってこれた理由は、次の3つであると自負しています。いずれも「決算書が読める」ことが前提条件となっています。
●大企業、有名企業だから安全と考えなかったこと
●決算書をしっかり読み、好業績で財務の優れた企業に投資を行ったこと
●雑誌やネットの情報に頼らず、自ら銘柄を発掘したこと
ただし、私も最初から決算書を理解していたわけではありません。初心者時代は、新聞・雑誌などの安易な情報に飛びつき、損をしたものです。
何度も痛い目にあったあげく「決算書をじっくりと分析して、自分で投資判断を行うことが、遠回りのようでも実は近道である」という結論に達したのです。
株式市場では、その場の雰囲気や流行に左右されず、自分自身で投資判断を下せる投資家のみが成果を上げることができます。 そのためには、決算書を理解していることがベースとなります。 皆さんも、本書に取り組むことにより「賢明なる投資家」への一歩を踏み出していただければ、著者として幸いです。
「あとがき」より
昨今の世界的な株価下落により「ファンダメンタル分析など、もう役に立たないのではないか」という意見も聞かれます。
しかし、歴史を振り返れば、企業業績と株価は中長期的に連動していることも事実です。
そうであれば、今はチャンスといえます。決算書を分析したうえで、自分なりの投資判断を下すことができれば、高いリターンを得られるかもしれないのです。
問題は「決算書の内容を、いかに自分の投資行動と結びつけるか」でしょう。ここが、初心者と中上級者の分かれ目であり、意外と「深い溝」になっているようです。
少なからずの個人投資家は、その溝を飛び越えることができず、まっとうな投資をあきらめてしまいます。
ただ、まえがきでもふれましたように、他人頼みの投資情報だけで利益を上げられるほど、株式投資の世界は甘くありません。
本書は、初心者と中上級者の間にある深い溝の「橋渡し役」を目指してみました。
決算短信表紙、セグメント情報、損益計算書について、自分なりに考えてみる手助けになればと思っています... (全文を読む)
読者のご意見
演習形式になっており、決算短信表紙やセグメント情報、損益計算書などの具体例...