オーディオブック(音声ブック) を聴くには? | 書籍版 | CD版 | playwalk版
35人のトレーダーたちの話はいずれも重要で、示唆と教訓に満ちている。
(1) なぜ彼らは逆境に立たされたのか、 (2)ウィザードたちはどんなところにつまづいたのか、 (3)危機に陥った状況をどう解決・脱出したか、 (4)そのときスーパートレーダーはどんな感情的反応を見せたのか、 (5)どんな影響があとまで残ったのか、 (6)トレーダーたちはその大損失によって何を学び、トレーディングスタイルはどんなふうに変わったのか、 (7)どんな点が普通のトレーダーと同じだったのか(違っていたのか)――これらのさまざまな問題ついて、35人のトレーダーがまれにみる率直さで著者のアート・コリンズと語り合っている。これらの話はどれをとっても、多くのトレーダーにとって身につまされるものである。話は時に悲しく、時にはブラックユーモアに満ち、そして間違いなく、われわれトレーダーの思考を激しく刺激する!
あなたが手にとっている本書には、第一級のトレーダーたち――特殊な能力によって普通のトレーディング水準のはるか上をいく人々――の痛ましい話が収められている。巧みに築き上げられた輝かしいキャリア全体のなかで生じた並外れて悲惨な経験ばかりが描かれている。大損失だけを取り上げて、そのときトレーダーたちがどう対処したかを扱った本は、本書が初めてであろう。保有しているポジションが逆行して含み損がかさみ、「一体、どうしたらいいんだ」と、夜眠れぬ経験や神頼みをしたことのあるすべての人にとって必読書である!
本書は、三五人の当代一流のトレーダーが体験した最も悲惨な損失の物語である。プロのトレーダーだけに、その金額は半端ではない。一瞬のうちに数十万ドルが消えてなくなる。しかも、たいていそれは自分の財産で、豪邸や農場や高級車を失うだけでなく、借金まで背負い込むことになる。それだけに、その恐ろしい体験を形容する言葉もすさまじい。いわく、「ゾンビー状態になる」、いわく、「大ハンマーで腹を殴られたみたい」、いわく、「ショットガンの銃弾を浴びているみたい」などなど。
しかし、三五人の全員が最悪の体験を乗り越え、さらにはそれを糧として大きな飛躍を遂げる。だからこそ一流の名を冠せられているわけだが、トレードに携わるものにとって本書の価値はここにある。三五の体験談を読むうちに、災難を引き起こす原因を知り(儲けたあとの油断、オーバートレード、ナンピン、そして心身の不調と家庭内の不和)、マヒ状態をどのように打開するのかを学べるのだ。
三五人のトレーダーは、CBOT(シカゴ商品取引所)、CME(マーカンタイル取引所)――つい二〜三日前、両取引所が合併するとの報道があったばかり――を中心としたシカゴの市場で活躍しているという共通点を持つほかは、性別、年齢、専門とする投資商品、トレード手法など実にさまざまである。たとえば、トレード手法としては、スキャルピング(多数の少額利益を狙う)から中長期的トレードまで、また空売りあり、オプションあり、アービトラージありと、あらゆる方法、技法が登場する。本書にはそうした米国のプロのトレーダーの実態が生き生きと描かれている。
ところで、トレードにあまり親しみのない人にとっても興味深いのは、そうした専門のよろいの向こうに生身の人間像が浮かび上がってくることだろう。プロのトレーダーがほかの職業と違うのは、通常、最初から最後までまったく自分だけの世界で動くという点である。だれの指図も受けず、マーケットという巨大な相手に自分の力だけで挑む。登場人物の一人、ルース・バロンズ・ルーズベルトは勤めを辞めてプロのトレーダーになったとき、「これからは正しく行動することだけが重要となる」と感じたという。「正しく行動」しようとした結果がどうなろうと、すべて自分一人が責任を負う。本書には「自己規律」という言葉がたびたび出てくるが、逃げ出したくなるような恐怖、突っ走ろうとする欲望を自分でどう律するかが成功と失敗を分けることになる。本書はそうした自分との闘いをテーマとした三五の物語でもある。
と、大上段に振りかぶらなくても、三五人の個性豊かな人間が、どうして人生の大きな災難に見舞われたか、そしてそれにどう対処したかを見るだけでも興味深い。トップトレーダーたちから失敗談を聞き出し、それを客観的で、ときにユーモアを交えた簡潔なスタイルでまとめ上げたアート・コリンズの腕は見事である。トレードという優れて個人的な営みの悪戦苦闘のエピソードをどうか楽しんでいただきたい。
二〇〇六年一〇月
鈴木敏昭
第1章 ビル・ビーチ
「仕切ったときには、四五ティックもやられていました」
第2章 スティーブ・L・ミラー
「取引口座の残高が五六〇〇ドルにまで減った日のことは今でも忘れられません。その前は一〇〇万ドルを優に超えていたんですからね」
第3章 ウォルター・ブレサート
「俺は奇跡が起こせるという気分になったものです」
第4章 トニー・サリバ
「私はバットを手にとって、すんでのところで彼の頭蓋骨を血まみれにするところでした」
第5章 テレサ・ロー
「私の願いはただひとつ――全部手仕舞ったとき、会社への借金だけは残らないようにということでした」
第6章 ラリー・ローゼンバーグ
「強気のやり方でうまくやれると思い込み始めていました」
第7章 チャーリー・ライト
「私は、何があってもシステムに従おうという決意を固めました」
第8章 マートン・フェルドシュタイン
「まだまだ。どれだけ暑くなってもいいんだ」
第9章 ハワード・モールマン
「基本的に世界中が一丸となって押し上げようとしている市場で、私は空売りを試みているんです」
第10章 アドリエンヌ・ラリス・トグレー
「強迫観念をもっているなら、どんな人でも引き受けます」
第11章 パット・アーバー
「CBOTにとっては、オープン・アウトクライ方式と心中するよりは、電子取引で生き延びることのほうが望ましいのです」
第12章 マーク・クック
「杭に縛りつけられてショットガンの銃弾を浴びているような心持ちでした」
第13章 リンダ・ブラッドフォード・ラシュキ
「言ってみれば、戦争の古傷を見せ合うのに似ています。市場の剣闘士となる資格を得たことをそうやって証明しているんです」
第14章 ロレンス・G・マクミラン
「お金を印刷するのも同然でした」
第15章 ジャック・コッツ
「フロアを歩くと例のざわめきが聞こえてきたんです」
第16章 ジョン・ベイカ
「買い手をぎゅっとつかみ返してやった。唾があちこち飛びまくってひどいもんだったよ」
第17章 ティム・ヨーク
「ゾンビー同然で、『一体全体どうなってんだ』とぼんやり考えるだけでした」
第18章 ドン・スライター
「四日間稼いだあと、五日目にそれを全部なくしてしまうんです」
第19章 チャック・ウェイファー
「彼は今すぐシカゴに戻って来いと言うんです」
第20章 ジョー・ディナポリ
「墓場で一番の金持ちになるつもりはありませんでした」
第21章 デビッド・グレイ
「打ちのめされたという気分ではありませんでした」
第22章 トム・ウィリス
「ほとんど打率のようなアプローチをとるようになっていました」
第23章 ラリー・ペサベント
「見通しが外れるのはよくあることですが、市場は絶対に間違えません」
第24章 デーモン・パブレートス
「大トレーダーが成功した方法よりも失敗から学ぶことのほうがたくさんありました」
第25章 スコット・スラツキー
「もたついていたら市場は先に行ってしまうんです」
第26章 ブルース・ウィリアムズ
「エンジン全開のトップギア状態のままでいて、スピードを落とすのを忘れていたんです」
第27章 コニー・ブラウン
「トレーダーになるのはテストパイロットより難しいですね。いつも自分の結果と向き合っていなければなりませんからね」
第28章 マイケル・K・ホフマン博士
「五〇枚のトレードをするのがどんな気分なのか知りたかったんです」
第29章 ジョン・マクラッケン
「トレーダーが犯す最大の過ちはポジションにしがみつこうとすることです」
第30章 スティーブ・ムーア
「何かが間違っていると警告のベルを鳴らしているんです」
第31章 ボブ・マーチン
「失ったのと同じ仕方でお金を取り戻したいと思ったんです。つまり今すぐに」
第32章 ビル・クレージー
「じり高(クリーパー)を買って急騰(リーパー)を売る」
第33章 トム・マレー
「何もせず手仕舞って次の機会を待つべきときに無理をしてしまうんです」
第34章 ルース・バロンズ・ルーズベルト
「波乱のもとは平穏のなかに潜んでいます」
第35章 レイ・カーンマン
「流動性のせいでトレード手法を変えざるを得なくなるのはまずいんです」
まとめ――繰り返される危険との出合い
訳者あとがき
(ウィザードブックシリーズ111)
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大岩川源太 源太塾(カレンダー)
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[オーディオブック] 投資を生き抜くための戦い 時の試練に耐えた規律とルール
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マイケル・バトニック/鈴木立哉/藤野英人 日経BP
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