コーポレート・リストラクチャリング(事業の再構築)は経営不振企業の業績を改善する手段であるだけでなく、新しい戦略的ビジネスチャンスを追求し、その企業の資本市場における信用力を向上させるものでもある。タイムリーなリストラ策がその企業の市場価値を数十億ドルという規模で引き上げることも珍しくはない。
しかし、多くの企業はそうしたリストラ策をどのように実施しているのだろうか。そして企業のリストラ策のひとつである会社更生法の申請と企業再建、M&A、スピンオフ、バイアウトなどは債権者、株主そして従業員たちにどのような影響を与えているのだろうか。さらに企業のリストラの選択肢、直面するさまざまな問題、プラスとマイナスの影響、当事者の利害の対立などはどのようなものなのか。
ハーバード・ビジネススクールのスチュアート・ギルソン教授は本書のなかで、過去10年間に多くの議論を巻き起こした13社の代表的なリストラの事例に深い洞察を加えることでこうした疑問に答えようとしている。多くの経営陣、投資銀行家、弁護士、投資家や企業のリストラ当事者とのインタビューの内容が数多く盛り込まれている本書は、読者の方にほかでは知り得ない貴重な事実とユニークな分析結果を提供している。
ハーバード・ビジネススクールで8年間にわたって続けられたゼミナールでまとめられた本書は、アメリカ、カナダ、ドイツおよびタイなど広範な企業のリストラ事例を通して、次のような問題がさまざまな角度から検討されている。
読者の方は本書なかで、「チェーンソー」の異名を持つアルバート・ダンラップ氏によるスコット・ペーパーの大規模なダウンサイジング、UAL(ユナイテッド航空の持ち株会社)の従業員バイアウトまでの道のり、USXのトラッキングストック発行に至る経緯、コンチネンタル航空の二度にわたる会社更生法による戦い、チェース・マンハッタンとケミカル銀行の巨大な銀行合併など、その渦中にある経営当事者の生々しい決断と行動の姿を目にするだろう。ここで展開されているのはさまざまなM&A、LBO、債務のリストラ、スピンオフ、労使の賃下げ交渉、従業員バイアウト、従業員の退職後給付プランの見直しなどのケースである。
ギルソン教授はアルファテック・エレクトロニクス(タイ)、ヒューマナ(アメリカ)、ローウェン・グループ(カナダ/アメリカ)、FAGクーゲルフィッシャー(ドイツ)など13社のドラマチックなリストラの事例に深い洞察を加えている。読者が企業の財務担当者、機関投資家、経営者、教育者や学生であるとを問わず、本書を読み進むうちに経営当事者たちの生々しい苦闘の姿があたかも自らの実体験であるかのような迫力で迫ってくるだろう。
(ウィザードブックシリーズ55)
'パンローリング書籍案内ページ'に本文の抜粋が掲載中!!
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