本書は花形のファンドマネジャーとの対談を収録し、謎の多いヘッジファンド業界を広く紹介している。
つまり、一九九〇年代までに多く見られた、制度由来のゆがみやアノマリー、データ・マイニングなどを利用し、リスクバジェットを果敢に使って高い収益を狙うファンドとは異なり、ここで主に取り上げられているファンドの多くは有価証券、あるいはその発行体の本質的な価値と市場価格との乖離をリスクコントロールをしながら、丁寧かつ忍耐強く衝く戦略を取っている。そして、彼らの成功に必要だったのは、一般に考えられているような経済学の学位や金融関連の情報などではなくて、法律、会計、経営、統計、心理といった分野の知識や経験、そして自律的な精神である。
また、本書のマネジャーたちが経営に心を砕いていることも大変興味深い。実際、ヘッジファンドを事業体として存続させることができる能力は、資産運用の能力と同等かそれ以上に重要である。多くのファンドは、パフォーマンスが悪いからではなく、企業経営が稚拙であるがゆえに破綻する。期待リターンの非対称的な分布を見抜き、それが具現化するときまで投資を継続するためには、リソースの有効な活用だけではなく、短期的なパフォーマンスの変化に左右されない体制を維持することが不可欠であり、またそれこそが彼らが顧客に提供できる主要な価値でもある...(すべて読む)
第1章 レイ・ダリオ――グローバルマクロの達人
付録
「マニート・アフジャはヘッジファンド業界の花形トレーダーに精通している。業界全体とその急速な成長について、そして常に変わり続ける投資環境に業界がどのように適応しているかについて執筆した本書は、業界の内部事情を明らかにしているという点で非常に興味深い。また、業界を導く魅力的なリーダーたちの姿を深く掘り下げて紹介していることも特筆すべき点である。彼らの経歴や価値観、そしてさまざまな考え方などを知ることで、読者はこの最も厳しい職業で成功するために必要なことは何であるかを学ぶことができる」――マイケル・スペンス(ノーベル経済学賞受賞者兼スタンフォード・ビジネス・スクールの元学院長)
■監修者まえがき
本書は、CNBCのプロデューサーであるマニート・アフジャがヘッジファンドについて著した“The Alpha Masters : Unlocking the Genius of the World's Top Hedge Funds”の邦訳である。金融業界での実務経験を持たない彼女がこのような特異な分野を対象に選んだ勇気にまず驚くが、にもかかわらず、専門家の手による類書と比較しても本書はまったく遜色がない。いやそれどころか、本書はリーマンショックの災禍をくぐり抜けたファンドにフォーカスすることで、この世界で起こっている変化を鮮明に際立たせることに成功している。
■著者紹介
マニート・アフジャ(Maneet Ahuja)
CNBCに所属するヘッジファンドの専門家で、投資情報番組『スクオーク・ボックス』のプロデューサー。2011年にはインスティテューショナル・インベスター誌と協力し、「デリバリング・アルファ」と呼ばれる同局のヘッジファンドサミットを共同製作およびプロデュースした。ヘッジファンド業界に対するこの画期的な取材活動が認められ、2009年にはCNBCのエンタープライズ・アワードという名誉ある賞を授与された。アフジャは、デビッド・テッパーやデビッド・アインホーンを自身の番組に出演させたり、ゴールドマンが販売したアバカスというCDOの取引についてSECが調査をしたことを受けて、ジョン・ポールソンが投資家に宛てて書いた手紙を取り上げ、話題となった。ウォール街に初めて足を踏み入れたのは2002年に17歳でシティグループの企業&投資銀行業務部門で信用リスクアナリストとして雇われたときだった。アフジャは2012年1月に発売されたフォーブスで「将来有望な30歳未満の30人」に選出、女性誌エルの2011年4月号の「才人特集」でも取り上げられ、2010年にもクレインズ・ニューヨーク・ビジネス紙で「将来有望な40歳未満の40人」に選出された。ツイッターは「@WallStManeet」、www.thealphamasters.com。
■目次
監修者まえがき
まえがき――ヘッジファンドの世界の神秘を暴く モハメド・A・エラリアン
序文
免責事項
第2章 ピエール・ラグランジュとティム・ウォン――人間対マシン
第3章 ジョン・ポールソン――リスクアービトラジャー
第4章 マーク・ラスリーとソニア・ガードナー――ディストレス債券の価値探求者
第5章 デビッド・テッパー――恐れを知らない先発者
第6章 ウィリアム・A・アックマン――アクティビストの答え
第7章 ダニエル・ローブ――毒舌で有名なマネジャー
第8章 ジェームズ・チェイノス――金融界の探偵
第9章 ボアズ・ワインシュタイン――デリバティブの草分け
あとがき マイロン・S・ショールズ
謝辞
■本書への賛辞
「本書は、今日の最も優れた投資家が最高の(そしてときには最悪の)トレードをしたときの心境を露呈している貴重な書籍である。読んでいると、ジョン・ポールソンやデビッド・テッパーなどの人物がまるで目の前に座って人気のテクニックや分析法について読者に語りかけているような、そんな錯覚に陥る。本書を買った賢い投資家は、価格の元を取るどころか、それ以上の収穫を得るに違いない」――ヌリエル・ルービニ(ルービニ・グローバル・エコノミクスの共同創設者兼会長、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスの経済学教授)
(ウィザードブックシリーズ224)
読者のご意見
相場の世界では常に、あるタイミングで
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