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マーク・モビアス/藤原玄/長岡半太郎 素晴らしきデフレの世界 インフレの正体とゼロ金利がもたらす新しい社会

素晴らしきデフレの世界 インフレの正体とゼロ金利がもたらす新しい社会

マーク・モビアス, 藤原玄, 長岡半太郎
パンローリング
四六判 254頁 2020年4月発売
本体 1,800円  税込 1,980円  国内送料無料です。
この商品は 本日 発送できる予定です。 (発送可能時期について)
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読者の声
「19世紀最後の25年間、素晴らしい技術革新のおかげで、物価は毎年1.5〜2%下落した。人はこれをデフレとは呼ばず、『進歩』と呼んだ」
――ジム・グラント(グランツ・インタレスト・レート・オブザーバー創業者)

生産性の劇的な向上がもたらしたデフレの世界!
データと歴史で見るインフレ神話の崩壊

本書は長きにわたり世界を覆っているデフレについて執筆したものだ。それは現在の日本にはっきりと見て取れる現象である。経済学の領域において、日本は特異な国であり、高名な経済学者たちの予想やモデルを裏切ることが多い。そのため彼らは恥をかくことを恐れ、日本経済の動きを説明しようとすることすらしない。例えば、日本は長年にわたりインフレを経験しておらず、デフレが続いている。これは日本とほかの国とを際立たせている特異な現象だと考えられている。有名な経済学者たちの常識を前提とすれば、日本はデフレを取り除き、インフレを起こさなければ、「悲惨な結末」に苦しむことになる、となるわけだ。

また、日本の有名な大学教授は労働力不足が日本経済の大きな悩みの種になると発言した。どうしてそれが問題になるか。国民が容易に職を見つけ、また容易に賃金の引き上げ交渉ができるようになるという意味ではないのだろうか。また、彼らはインフレを高める手段として金利の引き上げを求めていた。だが、金利の上昇がどうして企業や国民のためになるのだろうか。日本が年金や貯蓄で暮らす人々の幸福を軽視していることは明らかだ。

実のところデフレは良いもので、進歩の兆しであると考えている人はまったく存在しない。日本で起きていることは世界のほかの国々でも起きていることだという事実からいつまで目を背けるのだろうか。

デフレは危険なものであるという信念は日本政府の最高位にある人々にまで浸透している。その結果として、インフレを引き起こそうとする政策を次々と実行し、日銀はゼロ金利政策を推し進め、量的緩和政策に乗り出し、ETFでおよそ20兆円もの日本株を取得し、今も継続している。これは東京市場の時価総額に比べればわずかな金額にすぎないが、日経225という狭い範囲を対象とした指数に連動するETFばかりを買い付けるので、アルゴリズム取引や高頻度取引を行う者たちが日銀による買い付けパターンを解析し把握したので、それが市場の動きを助長することになった。

日本で起きているこのようなデフレは、19世紀後半に起こった生産性が劇的に向上したときと同じで、収入に対して費用の比率が低下するという一般的なトレンドを反映したものであることを理解すれば、今のようなデフレの状況もよく理解できるだろう。この生産性の向上は日本が世界に先駆けて開発したテクノロジーに負うところが大きいのだ。われわれは、今後もこの有意義なデフレの展開が続くものと期待している。(「日本語版に寄せて」からの抜粋)


著者紹介

マーク・モビアス(Mark Mobius)
1936年ニューヨーク生まれ。ボストン大学で修士号、マサチューセッツ工科大学で経済学と政治学の博士号を修得。香港を拠点にコンサルタントやアナリストとして活躍したのち、1987年よりテンプルトン・エマージング・マーケット・ファンドのファンドマネジャーに就任。新興市場投資の第一人者として屈指の運用成績を誇り、新興市場ファンドの運用成績は20年で3万6000%を超えた。現在はモビアス・キャピタル・パートナーズの代表。著書・DVDに『マンガ マーク・モビアス』『DVD 希望と崩壊――黄金の国へのパスポート』(いずれもパンローリング)、『国際投資へのパスポート――モビアスの84のルール』(日本経済新聞社)、『エマージングマーケットとは何か』(ダイヤモンド社)などがある。

目次

日本語版に寄せて
監修者まえがき

第1章 序論
第2章 歴史とインフレ
第3章 決定的に重要なインフレ統計
第4章 インフレとは何か
第5章 ハイパーインフレとは何か
第6章 マネーサプライとインフレ
第7章 インフレを測定する
第8章 インフレの管理と操作
第9章 素晴らしきデフレの世界
第10章 結論

注釈


日本語版に寄せて

本書は長きにわたり世界を覆っているデフレ(デフレーション)について執筆したものだが、それは現在の日本にはっきりと見て取れる現象である。経済学の領域において、日本は特異な国であり、最も高名な経済学者たちによる予想やモデルを裏切ることが多いようだが、それゆえ彼らの多くは恥をかくことを恐れて、日本経済の動きを説明しようとすることすらしない。例えば、日本は長年にわたりインフレ(インフレーション)を経験しておらず、デフレがずっと続いている。これは日本をして世界のほかの国々から際立たせている、極めて特異な現象だと考えられている。有名な経済学者たちの常識を前提とすれば、日本は危うい道をさまよっていると思われるので、デフレを取り除き、インフレを起こすべく努力しなければならない、さもなければ「悲惨な結末」に苦しむことになる、となるわけだ。

二〇一八年後半、とあるコメンテーターが日本の「デフレモンスター」について言及した。その年の第2四半期のGDP(国内総生産)が二・五%という予想をはるかに上回る四%の成長を示したという事実があるにもかかわらず、である。時を同じくして、日本の有名大学の教授は労働力不足が日本経済の大きな悩みの種になるだろうと発言した。どうしてそれが問題になるのだろうか。国民が容易に職を見つけ、また容易に賃金の引き上げ交渉ができるようになるという意味ではないのだろうか。だが、賃金の上昇が見られないことを嘆き、インフレを引き起こすためには欠かせないと述べるコメンテーターもいた。彼らはまた、インフレを高める手段として金利を引き上げることを求めてもいた。だが、金利の上昇がどうして企業や国民のためになるのだろうか。多くの混乱があることは言うまでもないが、論理的思考を欠き、最も重要なことに日本国民、とりわけ年金や貯蓄で暮らす人々の幸福に重きが置かれていないことは明らかだ。また、実のところデフレは良いもので、進歩の兆しであると考えている者はまったく存在しないようである。実に、日本で起きていることは世界のほかの国々でも起きていることだという事実はいまだ認識されていないのだ。(続きを読む


監修者まえがき

本書は新興国市場投資家のさきがけであるマーク・モビアスの著した“THE INFLATION MYTH AND THE WONDERFUL WORLD OF DEFLATION”の邦訳である。本書のテーマはインフレならびにデフレであるが、ほとんどの記述はインフレに割かれており、インフレが私たちの社会に与える影響の歴史や、その測定および管理の難しさが述べられている。これは私たち人類が近代において長らくインフレを体験してきたことを考えれば当然のことだろう。

だが、いま現在の読者の多くはデフレのほうに関心があるのではないだろうか。一般にデフレについては否定的な意見を持つ識者が多いと思うが、著者は「第9章 素晴らしきデフレの世界」で詳しくこれを論じ、そもそもデフレは現代の生産性の向上やテクノロジーの進化の影響下においては必然的に起こりえるものであること、そしてそれは一般の人々にとって必ずしも悪いものではないことを示唆している。確かに、供給が容易になれば需要をすべて補ったうえで価格はさらに下がるだろう。現に近年においては同じ質の製品やサービスの価格が以前よりも下落し、人々の生活は向上している。 (続きを読む


ウィザードブック295)

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