増田丞美 Sukemi Masuda
米大手投資銀行、米CTA(先物・オプション専門投資顧問)、海外ヘッジファンドでトレーダー、ファンドマネジャーとしてオプショントレードに携わる。現在、自らがオーナーの投資会社を所有し、オプション倶楽部等の一般投資家向け投資クラブ等を運営する傍ら、ヘッジファンドを運用している。『最新版オプション売買入門』、『最新版オプション売買の実践』(以上、パンローリング刊)等オプションに関する著書・DVD多数。米コロンビア大学卒(Class of ’85)


飽きっぽい性格の私を現在まで飽きさせなかったものが3つある。

一つは数学の「フェルマーの最終定理」の証明、二つめはポーカー、そして最後は私の生涯の職業となったオプショントレードである。

「フェルマーの最終定理」は3以上の自然数n について x の n乗+ y の n乗 = z の乗を満たすゼロでない自然数 (x,y,z) の組合せが存在しないという定理である。この証明に挑んでいたときは何が悲しくて世界中の数学者が“こんなもの”に長年挑戦し続けているのかわからなかった。しかし、この定理の証明の過程でさまざまなドラマがあり、いろいろな数学理論が生まれ、数学の発展に寄与したということがわかった。一見単純に見えるものほど奥が深い。

ポーカーを知ったのは学生時代だが、このゲームも一見単純に見えるが奥は相当深い。当事はポーカーと後に自分の職業となるオプショントレードの間に関係があることなど想像さえしなかった。今ではポーカーという名の“ゲーム”は、それをプレーするしないにかかわらず、われわれの人生そのものに深く関わっていると感じる。

以下は、私が若い時分にオプショントレードについて多くを学んだデビッド・カプラン氏お気に入りの著書“Poker, Sex & Dying: The Heart of Gambler”からの引用である。

「ギャンブルは難しい。ある意味、すべての行為の中で一番難しいといえる。勝つためには強い確信をもち真剣に取り組まなければならない。ほとんど人が勝てないのは自分を知らないからだし、知っていても、自分の行動をコントロールできなければ勝てないはしない。ギャンブルでは武器は自分自身だけなのだ」

カプラン氏は言う。トレーダーは“ギャンブル”を“トレーディング”に置き換えれば啓発されるだろう、と。同感である。

フィル・ゴードンのポーカー攻略法 入門編』を相場や賭け事に携わっている人だけでなく、ビジネスマン、経営者、学生、家庭の主婦にいたるまでいかななる分野の方々にも読んでもらいたい。「社会」という名の“ポーカーゲーム”の参加者である私たちの様々な悩みを解決する一つの助けになるかもしれない。