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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2024/10/09 12:37, 提供元: フィスコ

はてな Research Memo(7):2025年7月期はテクノロジーソリューションサービスがけん引

*12:37JST はてな Research Memo(7):2025年7月期はテクノロジーソリューションサービスがけん引
■はてな<3930>の今後の見通し

1. 2025年7月期の業績見通し
2025年7月期の業績は、売上高で前期比13.6%増の3,760百万円、営業利益で同199.2%増の203百万円、経常利益で同123.6%増の203百万円、当期純利益で同125.6%増の140百万円と大幅増益に転じる見通しだ。売上高はコンテンツプラットフォームサービスやコンテンツマーケティングサービスの減収をテクノロジーソリューションサービスの増収でカバーする構図が続く見通し。利益面では、人件費やDC利用料の増加が継続するものの、増収効果によって対売上比率では低下するほか、「GigaViewer」の大型開発案件の納品を済ませたことによる業務委託費の減少も増益要因となる。

(1) サービス別売上見通し
a) テクノロジーソリューションサービス
テクノロジーソリューションサービスの売上高は、前期比23.0%増の2,841百万円と2ケタ成長が続く見通しだ。引き続き「GigaViewer」を中心とした受託サービスがけん引役となる。「少年ジャンプ+」アプリ版におけるレベニューシェアや運用料が通期でフル寄与すること、加えて「GigaViewer」Web版やアプリ版の新規開発案件の受注や、既存案件における広告運用の積み上げが増収に貢献する見通しだ。Web版については従来と同様年間数件程度を受注し、アプリ版については「少年ジャンプ+」の開発実績を基にWeb版導入企業を徐々に開拓していく戦略である。「少年ジャンプ+」アプリ版についての顧客企業からの評価は上々で、アクティブユーザー数も順調に伸びているようで、アプリ版でも業界デファクトスタンダードを目指す。

「Mackerel」は「次世代Mackerel※1」への移行期と位置付け、サーバー監視サービスから「OpenTelemetry※2」に準拠したオブザーバビリティプラットフォームサービス※3へと進化を図る。具体的な取り組みとして、2024年6月に(株)Vaxila Labsから事業譲受した監視プラットフォームサービス「Vaxila(ヴァキシラ)※4」を同社の「Mackerel」と統合し「Vaxila for Mackerel」として2024年8月にリリースした(追加費用は無料)ほか、2024年11月にOpenTelemetry対応の正式版サービスをリリースするとともに、料金体系も従来の監視サーバー台数に連動する課金体系だけでなく、監視対象となるメトリック数に連動した課金体系を導入する予定だ。また、2025年前半には分散トレーシング機能(正式版)を、2026年中頃にはログ管理機能をリリースすべく開発を進めていく。機能を拡充することで既存顧客のアップセルを進めていくほか、機能を拡充することで今までリーチできていなかった見込み顧客への商談が可能となり、新規顧客の獲得が進むものと予想される。こうした取り組みによりここ1〜2年伸び悩んでいた「Mackerel」の売上高は2026年7月期以降は再び成長路線に復帰するものと予想される。

※1 サーバーのソフトウェアの状況等を監視するためのオープンソースによる標準規格「OpenTelemetry」に対応するためのプロジェクト。従来は独自規格であったため、容易に参入できなかった企業に対しても「OpenTelemetry」に対応することで導入が進みやすくなるといった効果が期待される。
※2 ソフトウェアのテレメトリーデータ(トレース、メトリック、ログ)を収集し、監視と分析のために遠隔地に送信するためのツールの標準規格で、2021年にVer1.0が公開された。
※3 アプリケーションソフトウェアも含めた可観測性(オブザーバビリティ)も担保するサービス。
※4 情報システムの開発・運用担当者向けに、アプリケーションソフトウェアのエラーや速度低下などユーザー体験の悪化原因を分散トレーシング機能により発見し、解決するSaaS型ツール。「OpenTelemetry」に準拠しており、安価にAPM(アプリケーションソフトウェアのパフォーマンス管理)を行うことができる。

b) コンテンツマーケティングサービス
コンテンツマーケティングサービスの売上高は前期比2.8%減の618百万円を見込む。運用メディアの件数は前期末比横ばいの142件と保守的に想定しているが、広告売上の落ち込みが減収要因である。ただ、1メディア当たりの平均売上高については、コンテンツ制作支援等に注力することで前下期を底にして緩やかな回復を目指している。

こうしたなか、新規事業として2024年7月にAIを活用した発話分析ソリューションサービス「toitta(トイッタ)」のβ版をリリースした。「toitta」は企業内でデザインリサーチやマーケティングリサーチに携わるチーム向けに開発したツールで、ユーザーインタビューの録画・音声データをAIで処理し、データ分析しやすい形に整える機能を持つ。従来は人力に頼っていたインタビュー内容の分析や纏め作業を自動化することで、リサーチ部門の生産性向上を支援する。インタビュー内容の書き起こし作業をAIで自動化するといったサービスは多くあるが、同社サービスの特徴はインタビュー内容から、分析する際のデータとして扱える「キーワード」を自動生成し、親和図法※などの下準備が必要な質的分析を実施できる点にあり、現時点で類似の機能を持つサービスは国内にはない。同サービスを開発するにあたっては、「はてなブログ」で取り扱ってきた大量のテキストデータを分析・抽出する技術やノウハウが生かされている。サービス発表後の反響も想定以上に大きかったようで、β版を利用している企業からも実用性について高い評価を受けている。β版から有料機能があり、2025年7月期中に正式版をリリースする予定だ。SaaS型の月額課金モデルで展開し、1契約当たりの月額売上高は数十万円規模を想定しているようだ。ニッチ市場にはなるものの、独自性の高いサービスとして注目される。

※ 親和図法とは、ある課題に対する事実・意見・発想を言語データに変換し、言語データ同士の「親和性」を見つけて統合図を作っていく手法。

c) コンテンツプラットフォームサービス
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比17.6%減の300百万円と減収傾向が続く見通しだ。景気動向やWeb広告のトレンドを踏まえて、アドネットワーク広告売上の減少傾向が続くことを想定している。ブログの有料記事販売についての流通額は拡大する見込みだが、売上高への影響はまだ軽微に留まると見ている。こうしたなかで、生成AIの活用によるサービス進化に向けた開発を継続し、「はてなブログ」の活性化に向けた取り組みを進めていく方針だ。

(2) 事業費用計画
事業費用は前期比10%増の3,556百万円を計画している。内訳は、人件費で同13%増の1,896百万円、DC利用料で同12%増の844百万円、その他費用で同1%増の815百万円を見込む。人材投資についてはサービス制作関連職だけでなく、新規事業立ち上げのための営業職などの採用も進め、純増数で前期末比8名増を予定している。人件費の伸び率が高くなるのは、前期に採用した人員の人件費がフルに寄与することに加えて、業績回復に伴う賞与引当の増額を予定しているためだ。

一方、DC利用料の増加要因は「GigaViewer」の利用量増加に加えて、円安によるAWS費用の増加を想定したものとなっている。計画策定時は150円台/米ドルで一部は為替予約でヘッジしているものの、現状の為替水準(140円台/米ドル)が続くようだと計画よりも抑えられる可能性がある。その他費用については広報・広告宣伝費用が増加するものの、前期に「少年ジャンプ+」(アプリ版)の納品を済ませたことで、開発に係る業務委託費用が減少し、全体では微増に留まる見通しだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


《HN》

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