本書は、1987年に起こったブラックマンデー以降、いくつかの金融危機といわれる事象を、アカデミックなバックグラウンドをしっかりと持ちつつ、ポートフォリオ・インシュアランスなど代表的な金融技術開発に携わり、リスク管理にも長く実務家として携わってきた筆者の視点から解析したものである。
本書を読むと、現在の金融市場において、うまく消化され分散されていたように感じられる(実は、多くは意識されつつ放置されていた)リスクが具現化した場合の対応の難しさ、つまり本質的なリスク管理の問題を、金融市場の力学とリスク管理を行う組織の構造的な問題という視点から解説されていて、トレーダーという視点からはもちろん、金融機関のリスク管理という視点でも、十分な情報とインプリケーションを与えてくれる。
特にオプションのような保険的側面を持つ商品を、アクティブに扱うものにとっては、金融市場を理解する上で役に立つ。
私は、20年以上様々なオプション取引を行う中で、非常に強くガンマの効果を意識してリスク管理を行ってきた。プレミアムを払ってオプションを購入するという行為は、リスクプレミアムを低く評価する多くの個人及び機関投資家にとって、敬遠される部分がある。
本書を読めば、市場におけるリスクプレミアムの評価が、どのように低下していき、臨界点を超えた場合にネガティブガンマがどういった形で市場を揺さぶるか、実感できる。