やや、マーケットからは離れた素材の本であるが、東京市場を取り巻く環境認識に
は役立つ本である。作品では、日米中台の将来模様が克明に記され、2005年には中国
に軍事独裁政権が樹立されるストーリーとなっている。しかも2008年に北京オリン
ピックを控えた中国は台湾共和国の樹立を阻止することが出来ず、逆に沿岸部と内陸
部、漢族と少数民族と国家が分裂していく様子が描かれている。
ストーリーとして、2005年には、東京でIOC総会が行われ2012年オリンピックの
パリ開催が決定されるが、因みに作品中では、内閣総理大臣として石原慎太郎氏、官
房長官として石原伸晃氏が設定されている。
マネーの流れの中で、OECDは2005年までに有害税制を撤廃するように各国に求めて
いるという現実も存在するが、欧州、米国、そしてアジアというパワーの分裂に
やや違いが出てくる可能性は否定できない。
ヨーロッパの前面化、アメリカの後退、そしてそのパワーバランスに乗るアジアと
いう構図が一番理解しやすいのであろうか。2005年を交差点として、多くの価値基準
が変化してしまうという可能性は否定できない。
仕事柄、時折南太平洋のヴァヌアツへ出張する事があるが、ヨーロッパ、アメリカ、
そしてアジアのパワーバランスの集積地と化しており、東京がいかに情報過疎地で
あるかを思い知らされる事が多い。
日がなマーケットを眺め、マネーの流れを追い続けている者にとって、ロングターム
の世界情勢を把握するには、最適の一冊である。