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本書「百戦百勝」は貧農の生まれながらも、米相場・株式市場で財を成し遂げた山種種二をモデルした経済小説です。筆者が城山三郎さんなので、温かい目で主人公が描かれており、悲壮なシーンでもユーモアにさえ感じてしまいます。
主人公の豆二は、米問屋の小僧として米蔵で寝起きして働きます。次第に米の顔がわかるほど精通して「相場観」を磨いていきます。何度も何度も失敗を重ねながら米相場、株式市場で大きな財産を築く様がユーモラスに描かれています。
また、本書は経済史・相場史としても面白く読める1冊かと思います。本書で「2・26事件」のシーンがあるのですが、これまで陸軍将校のクーデターくらいの印象しかないわけです。しかし、そんな状況下で主人公の売建てが息を吹き返した描写や、関東大震災の相場の影響等々に触れると、歴史上の事件と相場の関係があることを面白く読むことができました。
歴史の激変にまみれ、浮き沈みに耐えながら主人公は、米相場や戦前、戦中、戦後の株式市場を米問屋・証券会社を経営しながらたくましく財を築いていきます。しかし、現在、彼の作った証券会社は業界の合従連衡で残っていません。美術館と事業会社が今でも残っています。
本書を読み在りし日の主人公を思うと、なんとも相場と相場師の儚さを感じてしまう1冊でした。株式市場に臨む者はこの儚さに耐えないといけないのでしょう。
(くらげ 20代 会社経営 「初心者投資」管理人)
本書は山崎種二氏をモデルにした経済小説である。同時にこれは、主人公が幼少のこ ろから50歳を超えるころまでの人生を描くことによって、戦前、戦中、戦後の様子を 描いた歴史読み物でもある。生き抜くことでさえ困難な時代にあって、主人公はただ 勤勉に働くことだけではなく、良く観察し、頭を働かせることによって、相場の世界 で成功を重ねていく。モデルとなった山崎種二氏の相場の張り方が理詰めであると言 われる所以である。我々読者はこれを一人の相場氏の成功一代記として読むこともで きるし、当時の世相や経済界の様子をうかがうことのできる読み物としても大変面白 く読む事ができると思う。さらに、山崎種二氏の自伝「そろばん」と併せて読めばよ りその面白さが引き立つと思う。
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