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天才たちの誤算

R・ローウェンスタイン/東江一紀/瑞穂のりこ 日本経済新聞社

スリルとサスペンスに満ち溢れた金融ドキュメント。
ジム・ロジャーズ商品ファンドのマネージャー、ハリソン氏にぜひ読んでおけといわ れた本だ。

話はLTCMの栄枯盛衰物語。
ソロモン社からスピンアウトした債権アービトラージ・チームが ロング・ターム・キャピタル・マネージメント(LTCM)社を設立、 連銀出身者やノーベル賞学者たちを人寄せパンダにするマーケティング策が功を奏 し、国際的機関投資家から36億ドルを集める。

年率40%のリターンを達成し、ドリームチームとして賞賛を浴びるが、 スワップ契約や株式のリスク・アービトラージに「はまり」、 運用資金を減らしながらも巨大なレバレッジを貼ったことで、 外部環境の変化に身動きがとれず、理論と現実の乖離に負けてしまう。

個人的に、この本で印象的だったのは、後半部分。
毎日のように数億ドル単位という、とんでもない損失を出すLTCMに、 多くの業界エグゼクティブたちが、我を出し合ってドタバタする場面。

小説のように善役も悪役もいないが、 詳細な性格描写によって登場人物が人間くさく、かえって真実味がある(当たり前 だ)。
思わず友だちになったような気分。
またシニカルな文章がアクセントになって、読んでいて飽きがこない。

本書には失敗書独特の、「どうしたら失敗するか」について、いろいろと書かれてい る。 判断ミス、組織的問題など、おそらく人それぞれ思い当たる節があると思う。 もちろん、金融ドキュメントならではの金融知識や情報も盛りだくさんだ。 この破綻がヘッジファンドや金融業界に どのような変化をもたらしたのか、興味を感じている。

ちなみにLTCMの親玉のジョン・メリウェザーは、 また仲間とともにJWMパートナーズを立ち上げて、2.5億ドルを調達している。 敗者復活の機会が与えられるところが、ヘッジファンド業界の魅力だ。 本書からは、そうした金融ベンチャーたちの生命力や勢いも伝わってくる。

ぜひ、さいとうたかを氏に劇画化してもらいたい。

MKニュース 世良氏)

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