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第32回 最後の売り手になるな

2009/03/03

 2009年に入ってからも、日本株は今のところ下落基調が続いています。そしてその下げ方も、2008年10月のような急激なものではなく、毎日少しずつダラダラと下げていく、いやな下げ方になっています。

 株式相場が当面の底打ちをするとき、その多くは最終局面として「投げ売り」による急落が起こります。含み損を抱えてもじっと我慢しこらえていた投資家が、「もうだめだ」と思って一斉に持ち株を売ってしまうのです。しかし、その後は株価が下がれば売らざるを得ない投資家が減り、株価が下がることにより買い手も多くなってきますから、需要と供給が改善することで、株価は反転上昇に向かうことが多くなります。

 「投げ売り」は株価の下落局面の終盤で起こりますから、「投げ売り」をしてしまうと、結果的に安値で売り叩いたことになってしまいます。ですから、この「投げ売り」を避けることが大損しないための1つのポイントとなります。

 例えば、以下のような点に注意するとよいでしょう。


1.信用取引で買った株は必ず損切りルールを設定してそれを守り、多額の含み損をかかえたままいつまでも持ち続けない

 投げ売りをさせられる筆頭格は、信用買いをした個人投資家です。信用買いをしたあと、株価が下げ続けて含み損が広がり、これ以上の損失拡大に耐えられなくなって投げ売りをせざるを得なくなるのです。


2.下げ途中の中途半端な株価で買わない

 「安い」と思って買っても、今のような下落相場ではさらに大きく下がることがあります。そうすると、「もっと下がるかもしれない」と不安になって売ってしまいがちです。精神面を安定させるためにも、下落途中では手を出さないようにすべきです。


3.株価がもっと下げそうだと思ったら早めに売っておく

投げ売りをしてしまう投資家は、含み損が生じてもある程度までは我慢します。そして、我慢の限度を超える株価の下落が起きたとき、パニックになって売ってしまうのです。ですから、株価が下落基調を続けていて、さらに株価が下がりそうだと思ったら、できるだけ早い段階で売っておくべきです。その上で、株価の下落が収まったら再び買いなおせばよいのです。


4.損切りができないのなら、買った株の株価がたとえ10分の1になっても持ち続けるという強い意志を貫き通す

 筆者は損切りをしないという投資スタイルには反対ですが、どうしても損切りができないのであれば、いくら株価が下がっても持ち続けるという強い意志が重要です。

 買値から10%下落しても損切りせずに我慢するのに、70%下落したらパニックになって投げ売りしてしまうのでは元も子もありません。

 損切りするならきっちりとルールを守って実行する、損切りしないなら買った株がゼロになっても気にしないと覚悟を決める、というようにしましょう。どっちつかずは良くありません。

 今のところ(09年2月末)、「投げ売り」が起こっている形跡は、ごく一部の個別銘柄を除いては見当たりません。株価が反発に向かうためにも、一度短期間で急激に株価が下がって「投げ売り」が生じて欲しいものです。その方が、ダラダラ下げ続けるよりも反発が早まりますし、反発の規模も大きくなります。


足立武志
公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)
株式会社マーケットチェッカー取締役

1975年生まれ 神奈川県出身 一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として、執筆活 動、セミナー講師等を通じ、個人投資家が資産運用で成功するために必要な知識や情報の提供に努めている。

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