2021.9.21
<著者プロフィール> 浜口準之助(はまぐち・じゅんのすけ)
約15年にわたり機関投資家のファンドマネージャーとして株式運用に従事。信託銀行などで主に年金資金の日本株運用を行う。その後約14年にわたり投信運用会社にて投資環境のセミナー講師に携わる傍ら個人投資家として株式運用を行い、「億り人」の仲間入りを果たす。「浜口流コア・サテライト戦略」を提唱し自らも実践している。「醍醐味に満ちたライフワークとして、株式投資に勝るものなし」との基本観から、個人投資家に実践的な株式投資手法の研究を続けている。 社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『黄金サイクルと農耕民族型投資戦略』(パンローリング刊)、ブログ 浜口準之助のテツ・ホテル・グルメ・株式運用 をほぼ毎日更新中、こちらでは旅の話もしている。
浜口です。今回もまた、投資銘柄フォロー・定点観測から始めましょう。
まずは前回の当ブログのアップ日(2021年9月6日)以降の「浜口流コア・サテライト戦略」下記2つの図、上は株価が9月3日時点、下はその2週間後、株価が9月17日時点のデータです。この期間は市場全体が値上がりししたため、5401日本製鉄以外は、全銘柄上昇しています。中でも、今となってはすっかり「全国区銘柄」となった海運株。当ブログで一貫して取り上げている商船三井・日本郵船の株価(以下、両銘柄の株価と記す)上昇は美しく、今回もまた、ここもとの新高値となりました。一方、唯一値下がりの5401日本製鉄は説明が必要ですが、今後の投資対象として楽しみと考えます。これは後段で、詳しく触れます。
商船三井・日本郵船そして三菱商事とも、上昇要因は前回の当レポートのここで説明したシナリオの通り。同じことを書いてもクドくなりますので、今回はコメントを割愛させていただきます。
それにしても……三菱商事の株価は趨勢的に高く、先週末終値3,641円はここもとの高値であることに加え、2008年5月の史上最高値3,950円まであと300円強ですね。足元のファンダメンタルズの良さに加え、「ウォーレン・バフェット効果」もあるのでしょうか。まあ、喜ばしいことには違いありませんね。
三菱商事 30年月足(チャートギャラリー)
当ブログで披露している投資環境見通し、相場観については、方向性としては変化ありませんが、今後の見通しについて、より強気になっています。具体的には前回は景気敏感バリュー株は時間の問題で底打ち、上昇に転じる見通しとしていましたが、今回はここを、景気敏感バリュー株は総じて既に底打ちし、上昇中である銘柄が多くなったとします。より強気になっているわけですから、ここに掲載している銘柄群については基本、継続保有で問題なしです。
もう一つの投資戦略、「商船三井ロング・日本郵船ショート」について説明します。
上のグラフは9月3日時点、下はその2週間後、株価が9月17日時点のデータです。
9月17日時点で商船三井の株価は9,500円、一方で日本郵船は10,350円と、株価の単純比較では850円ほど郵船が高い状況です。
前回と比較して、両銘柄のさやは20円拡大するも、この程度の変化は誤差の範囲内。特段、変化があったわけではないと考えます。
私は現在も引き続き、「商船三井ロング・日本郵船ショート」ポジションは持っていません。
今後、どうするのか。これもここ何回か、ブログでも書いているのと同じですが。
さやの方向次第では、この「商船三井ロング・日本郵船ショート」ポジションを再度仕掛けたいと思っています。
しかし足元では、両銘柄とも強烈な上昇相場の渦中にあります。
さや取りよりも片張りの方が取れそうとの相場観に加え、現状では両銘柄のさやの方向性が見いだせないため、この戦略は様子見としています。
なおグラフは過去3カ月の商船三井と日本郵船の株価を示したものです。
グラフは日経SmartChartPLUSを用いて、概ね、重なるように作っています。
(日経SmartChartPLUS)
さて、ここからは今回のメインテーマ、「大相場に発展中の商船三井・日本郵船、そして最高益の日本製鉄は」について考えてみたいと思います。前回のテーマが「いよいよ大相場に発展するのか。商船三井・日本郵船の株価」ですから、引き続き海運株には強気ということです。
商船三井 30年月足(チャートギャラリー)
日本郵船 30年月足(チャートギャラリー)
これは商船三井・日本郵船の30年月足。
今回の海運株の相場は、2007年の大相場と比較されることが多くなったように感じます。
当時の最高値は商船三井が7月10日の20,400円、日本郵船が7月7日の12,750円。
これが視野に入ってきたということです。
実際、先週末の郵船の株価は10,350円ですから、あと2,400円。
ずいぶんと値上がりしたものです。
ちなみにこの2007年の相場とその天井打ちに関しては、
拙ブログ「郵船と商船三井の株価差の変化の歴史は?」にまとめていますのでご覧ください。
今回の海運株の相場は、いつ天井を打つのか。これを予測するのは大変難しいことです。
ちなみに2007年の相場は2003年に始まっていますので、約4年間、大相場が続いたことになります。
今回もこの再現を期待したいところではありますが、現状、そこまで楽観的になれるものか。
少し弱いかな……材料が。率直に、私はそう考えます。あくまで、「現状」ですが……
海運株は両銘柄とも、今期は増益増配・来期は減益・減配の見通し。
この見通しが今後どう変化していくかがポイントになります。
この辺は、このブログでも継続して紹介させていただいてる
MorganStanley MUFG証券の海運株アナリスト尾坂さんのコメントに注目しています。
尾坂さんの目標株価は現状、商船三井11,300円、日本郵船10,400円。
日本郵船は、既にほぼ目標株価近くに位置している状況です。
ただし氏は、両銘柄は今期3度目の業績上方修正を近々行うとの見方を公言していますので、
近い将来、より高い増益率・より高い目標株価のレポートが出てくると思われ、それに期待したいと思います。
この件については、以下の拙ブログで詳しく説明していますので、こちらも併せてご覧ください。
新たな目標株価「商船三井11,300円、日本郵船10,400円」レポートが発行されたな(2021年8月24日)
第10回 商船三井・日本郵船は今後、3回目の業績上方修正があるのか(2021年8月10日)
また尾坂さん以外に、このアナリストお二人のコメントも注目されます。
特にみずほ証券の鈴木さん。商船三井の目標株価が14,000円、日本郵船は12,000円。
氏の配当利回りをもとに目標株価を算出する方法は、私にもしっくりします。
商船三井と日本郵船の目標株価が10,000円以上!!そんな有力アナリストが、さらに2名登場したけどな(2021年8月29日)
海運株の相場は現在、7合目から8合目あたりといったところでしょうか。
ここにきて顕著に目立つこと。それはこれまで、海運株に見向きもしなかった投資家が入ってきていることです。
私はTwitterでも情報発信しているのですが、Twitterでの私のフォロー者数が日に日に増加しています(みなさんもフォローしてくださいね(笑))。新たな方はみな、海運株の情報が欲しくて私をフォローしている事は明らかです。このような向き、これまでと異なる投資家の新規参入買いが入ってきていることも、ここもとの株価上昇の背景としてあると思います。
逆に言うと、これは相場の最終局面近しのシグナルといえなくもない。
失礼な表現で恐縮ですが、NYの古い相場格言で「大衆は常に間違う」というのがあります。
要注意ではありますね。
私はバリュー株の目先天井として、暫定的に来年、つまり2022年の3月をメドに考えています。
来年3月はこの相場の起点、それは新型コロナに伴い暴落し形成した安値の日、
2020年3月23日あたりからほぼ2年にあたります。
ここ数年の景気敏感バリュー株の相場を日柄で考えれば、
2年から3年上昇し、それと同じ日柄、もしくはそれにプラスαした日柄下落する循環を繰り返しています。
これはいわゆる在庫循環の影響を受けていると思われますが、
今回もそれに準じるということであれば、Sell in May……昨今は前倒し、Sell in Aprilの時も……を一応のメドと考えるわけです。
ただし今回は、景気循環的には在庫循環以外に設備投資、建設投資などの循環も上向きとのことですので、もう少し先かもしれませんが……まあ、2022年の3月といっても、現在から半年近くあります。それ以降のことは、もうしばらく先に考えていけばいいんだろな。そう考えます。
さて今回はポスト海運株と言うことで、日本製鉄について考えていきたいと思います。
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