2021.9.21
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さて今回はポスト海運株と言うことで、日本製鉄について考えていきたいと思います。
この銘柄は当レポートでもすでに買い推奨しているわけですが、もともとは海運株との相関関係が高い銘柄なのに、まだ大きな相場になっていない。この背景と状況について、考えられることのひとつを説明しています、この拙ブログをご覧ください。
第7回 時間の問題で、海外投資家は日本株を買ってくることに(2021年6月28日)
ここでSMBC日興証券アナリストの山口さんが9月9日に書いた日本製鉄のレポートをご覧いただきたい。要点は下記です。
2022年3月期は市場最高益更新見通し。それに伴い、目標株価は3,350円(先週末の終値は2,153円)。
背景には、ここもとの鋼材の国際市況上昇に加え、自動車用鋼材の値上げに成功したことがある。
上記の自動車用鋼材の値上げについては、日本製鉄は同業他社以上の値上げができたと推定され、同行他社との業績格差が拡大しそう。
鉄鋼株は海運株と比較して、また相場が若いのも魅力。
この点については、前々回の当ブログで紹介した復活のR@株式投資さん(@R21061202)から、
またも説得力あるTwitterツイートをいただきました。
このグラフは、日本製鉄(旧新日鉄)の1980年以降の長期チャート。1988年、2007年と、15〜20年ごと、建設投資循環に沿った大相場が来ていることがわかります。そして復活のR@株式投資さんは、日柄的にはそろそろ、この1988年・2007年型の大相場が来てもいいのではないかと言っているわけです。仮説ながら良く分析された、素晴らしい作り込みのチャート。Rさん、ありがとうございます。少し説明しますね。
Rさんの見解に共感します。私も同じことを考えていますが、上値については現状、4,000円前後かなと、感覚的にそう思っています。まあこれはあくまで「現状」ですが……まあそれでも、現在の株価からすれば2倍近いですよね。
ただ1988年・2007年と比較すると、構造的に大きく変わっているところがある。それはそれまでは中国は製鉄技術が十分ではなかったが、現在は中国は世界一の製鉄国になっている。このため、繰り返しますが。上値は割り引いて考えなければならないだろうが、ここから鉄が相場になるという考えには全く同感ですし、強く共感します。
Rさん、重ねましてありがとうございます。あなたとは、同じ船にも乗っていますしね……下船するのは、もう少し先でしょうね……(笑)
ところで、Rさんはこのツイートの冒頭で、こう書いています。
「この世界の膨れ上がったお金がこれから入ってくる時だからこその戦略ではないか、とも思えてきました」
この意味は何かというと、日本製鉄は先週末、エクイティファイナンスを発表しましたよね。これです。
日本製鉄、転換社債3000億円 15年ぶりに発行(日本経済新聞)
これは寝耳に水。この話を受けて、先週末(17日)の日本製鉄の株価は2,153円、136.5円安。
率にして5.96%の下落となったわけですね。
驚いた私は、日本製鉄のIRに問合せしましたよ。これですね。
日本製鉄に電話した。最高益なのにエクイティファイナンスとは、どういうこと?(2021年9月18日)
史上最高益でファイナンスとは何事だ……でもね。Rさんも書いているとおり、
現在の世界的な金余り低金利を利用し、良い条件で資金調達しようというのは、悪い戦略ではない。
タイミングが超唐突だっただけ。そうとも言えますね。
あと、そもそも日本製鉄は、株主のほうを向こうという気持ちは、ハナからないのだと思う。
かつては「鉄は国家なり」と言われた。鉄といえば日本製鉄(旧新日鉄)ですよ。
実に自分本位というか会社First。株主を向いていない証拠。
でもね、確かに、この調達した資金で株価が上がれば、それでいいんだよな……と、驚いた。
日本製鉄の今回のファイナンスを精査していたら、こんなことに気が付いた。
私は日本製鉄が好きになった。この会社を応援します。株式投資を通してね。
驚いた……日本製鉄の優しさか?CBの転換価格、時価より30%近く上なんだな(2021年9月19日)
以上です。今回はこの辺で、みなさんの株式運用の参考になれば幸いです。
なお皆さんの株式運用は、くれぐれも自己責任でお願いします。ここは強調させていただきます。
<著者プロフィール> 浜口準之助(はまぐち・じゅんのすけ)
約15年にわたり機関投資家のファンドマネージャーとして株式運用に従事。信託銀行などで主に年金資金の日本株運用を行う。その後約14年にわたり投信運用会社にて投資環境のセミナー講師に携わる傍ら個人投資家として株式運用を行い、「億り人」の仲間入りを果たす。「浜口流コア・サテライト戦略」を提唱し自らも実践している。「醍醐味に満ちたライフワークとして、株式投資に勝るものなし」との基本観から、個人投資家に実践的な株式投資手法の研究を続けている。 社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『黄金サイクルと農耕民族型投資戦略』(パンローリング刊)、ブログ 浜口準之助のテツ・ホテル・グルメ・株式運用 をほぼ毎日更新中、こちらでは旅の話もしている。