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『発想の大転換
21世紀に向けての投資運用

ウィリアム・H・グロース/渡辺紘一
東洋経済新報社
四六判 252頁
1998年10月発売
2,200円+税

今回コメントくださったお客様は 斉藤 福光 さん です
Q1 オススメ書を教えて下さい。

"私は毎月、ビル・グロースのマーケットコメントを楽しみにしています"  ウォーレン・バフェット

本書は米国最大の債券専門運用会社であるPIMCOのチーフインベストメントオフィサーであるビル・グロースが世に送り出した運用哲学の書である。彼は31年前にPIMCOが設立された時の創立メンバーであり、債券ファンドマネージャーとしてPIMCOを約40兆円の資産額を誇る債券運用会社になるまでに育て上げた人物である。マーケット参加者は、米国のメディアに毎日登場しているビル・グロースの運用方針に注目している。「債券の権威」と呼ばれている所以である。本書では、彼の長期的な運用哲学が余すところをなく語られている。なぜゆえに彼は債券マーケットで勝ちつづけたのか?その手法が明かされる。

ビル・グロースの投資哲学、それは長期的な運用すなわち3〜5年の見通しに基づいて運用方針を立てることである。優れた債券運用者に求められるのは、数学者と、駆け引きに長けた商売人、経済学者の要素を3分の1ずつ兼ね備えた投資家としての資質である。 では、具体的にどのように長期的な見通しを立てるのか?  彼が一番重視しているのは、将来の出生率と移民流入のパターンが織り成す人口動態学である。97年当時、先進工業各国は少子高齢化の様相を呈しており、今後のGDP成長率には大きな期待が出来ないと彼は考えていた。また、貿易及び金融のグロバリーゼーションによる世界的な企業間競争の高まりを受けて、労働者の実質賃金が低下していくため将来的に個人消費は盛り上がりに欠けると予測していた。

このように世界的な高成長のトレンドが終わった後、個人投資家はどのような資産運用を考えていけばよいのか? インフレ率が2%で推移する世界では、金利収入を第一に考えて、モーゲージ債、エマージング債、インフレ連動債などが組み合わされた債券投資信託への長期投資を提案している。また、債券投資信託を選ぶときには、インデックスに勝つことが出来ている上、手数料の安い運用会社に投資することが重要としている。常に株のほうが債券よりもリターンが良いとは限らないからである。

以上が97年に発表された本書の要旨であるが、6年後の現在から振り返って見ると正しくマーケットを認識していたといえるだろう。PIMCOのホームページ(http://japan.pimco.com/)では毎月、ビル・グロースのマーケットコメントを掲載しているので、現在の彼のマーケット見通しを楽しむことができます。長期的な資産形成のための運用哲学や経済の見方について参考にして頂ければ幸いです。

Q2 5点満点で採点すると?
読みやすい	★★★★
知識がつく	★★★★★
おもしろい	★★★★
儲かる		★★★★
専門的		★★★★★
総合オススメ度	★★★★★

斉藤 福光 さん ピムコ ジャパンリミテッド

東京大学工学系大学院卒。日本証券アナリスト会員。都市銀行において外国債券ファンド マネージャーとしてバンキング・ポートフォリオ運用に従事した後、現在はPIMCOジャパンにて クライアントサービス業務を行っている。シニアアカウントアソシエイト。

PIMCOのホームページでは毎月ビル・グロースを始め、弊社のポートフォリオマネージャーのマーケットコメントがご覧頂けます。

ありがとうございました。

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