投資理論を生み出したヒューマンなドラマ
本書には「ウォール街を変えたノーベル賞経済学者たち」という副題がついています。少し理論的な部分もありますが、全体は非常に読みやすい本です。「理論的」と聞いて怖気づく方もいるかもしれませんが、著者、バーンスタインの本はいつも実務に根ざした人間を感じさせます。
ノーベル賞を受賞した学者たちが実務と係わり合いながらどのようにして新しい理論を生み出していったか、そこにはとてもヒューマンなドラマがあります。読んでみると難しい理論ほど、「なんだ、そういうことか・・・」と思うことが多いもの。恐れずにチャレンジしてみてください。
私にとってこの本は、特に思い入れがあります。第12章の「星座」で紹介さ
れている、世界で始めてインデックス運用が実用化された時のエピソードで
す。実はここに取り上げられている会社に私は15年間働いていたのです。日
本法人を設立して、なかなかビジネスが伸びなかったとき、このインデックス
運用草創期のエピソードでどれほど勇気付けられたか知れません。
「そう、この本にでている彼らの直面した困難と比べれば、いまの自分の困難など比較に
ならない・・・」、そう思ったものです。また、若い人たちが集まり、新しい
発想で革命を起こしてゆくその姿がとても心地よく思われたものです。いま、
日本の年金市場におけるインデックス運用の普及を思うと昔日の感がありま
す。
この本、一回で読みきる必要はないでしょう。面白そうなところを拾い読みす
るのでも良いと思います。何度も、何度も読み返すほどに味わいがでてくる本
です。10年、20年、30年という長期投資の良き伴侶となる本だといえます。