優れた投資先を求めて年200日は世界を飛び回るエマージングマーケット投資の先駆者、マーク・モビアス氏(テンプルトン・アセット・マネジメント代表)が緊急来日! エマージングマーケットの第一線で40年以上の経験をもつ第一人者は、いま世界をどう見ているのか?――ヘッジファンドやグローバル企業投資でおなじみの浅川夏樹氏をナビゲーターにお迎えした緊急ランチミーティングのようすをお届けします。
新興市場ファンドの父 |
浅川夏樹氏インタビュー |
直筆サイン本プレゼント |
アルゼンチン紀行
ナビゲーター/浅川夏樹氏 Natsuki Asakawa |
|
グローバル化時代の資産運用〜ハッピーリタイアメントを目指して主催
「世界で通用する企業へ投資し、グローバル展開をしている金融機関でお金を運用する」というように、日本だけでなく海外の企業や金融商品にも目を向け、多彩な投資戦略でグローバル化時代の資産運用を実践している個人投資家。著書に『グローバル化時代の資産運用』、『わたし、かわいいお金を海外投資でふやしました』など多数。ブログ「海外の気になる金融ニュス」、ロイター「攻めの不動産投資」なども日々更新中!
|
|
今後のアジア経済について非常に楽観的に見ています
Q まず、最初の質問は日本についてですが、マークさんから見て、日本経済と国内企業は今後十年でどのようになっていくと思われますか。また、国内産業について、特に興味をもたれている部門があればお聞かせください。
A 皆さんもお分かりのように、今年度の日本経済は確実に減退しています。そのことを考えますと、経済状況はあまりよくありません。しかし、それも来年までには回復するだろうと我々は見込んでいます。日本企業については、どの企業の株価も現在とても下がっていて買い手にとっては非常に魅力的な価格になっていると思います。なにより重要なことは、日本企業は自社株を買い戻ししているということです。これはいい兆候です。だから、私は、日本企業の株は今が買い時だと思います。日本企業で私が注目しているのは、中国やその他のアジアの国々で必要とされているハイテク技術を備えた企業です。なぜなら、そこには日本企業のためのビジネスチャンスが広がっているからです。
Q 例えばどのような企業が挙げられますか。
A 東芝や松下といったようなハイテク技術をもつ企業全てです。
Q 一流企業などですか。
A そうなりますね。
Q 銀行に関してはどうでしょうか。
A 現在の世界的な経済状況を鑑みれば、銀行については少し慎重にならなければいけません。しかし、銀行自体は優良なものが多いので、厳選した上で、今後の状況を見ていくのがよいでしょう。
Q アジア地域の経済についての質問ですが。アジアの企業とアジア経済についてどうお考えですか。
A 今日のアジアの強みは、中国とインドという2大産業地域が存在することです。中国とインドの経済成長率はアジア1です。中国は7〜8%、インドは5〜6%の経済成長が見込まれています。この現象は、日本も含めたアジア全体に大きな影響を与えることは間違いありません。なぜなら、彼らは輸出以外に輸入もしているからです。とくに機械装置を中心としたテクノロジーの需要が高いですね。また主に日本や台湾などで作られた嗜好品に対する需要も高い。日本や台湾はインド・マレーシア・タイ・ベトナムなどでつくられた安価な商品を必要とし、反対にインドを含めた国々は日本や韓国、台湾からテクノロジーを必要としているのです。ですから、我々は今後のアジア経済について非常に楽観的に見ています。
Q それは、10年から5年でアジア経済が回復するということですか。
A 5年どころか、1〜2年、早ければ来年には回復が見込めると見ています。
Q これはオーストラリアも含めた話ですか。
A もちろんオーストラリアも商品価格の回復による恩恵を受けるでしょう。商品価格は現在の低水準から回復すると見込まれていますからね。
Q 今後大きな収益が見込めそうな企業があったら教えてください。
A 正確な企業名まではお伝えすることはできませんが、消費者製品やハイテク技術、コモディティーに従事している企業が有力でしょう。
Q 消費者製品とは具体的にどのようなものをさすのですか。
A 付加価値が見込めるものなら何でもですよ。加工食品や装飾品、電気製品、携帯電話、あと、様々なサービスも含まれます。
Q チャイナモバイル(中国移動通信集団公司)などですね。
A よい例ですね。
Q マークさんはこれらの多くを中国企業の中に見出しているのですね。
A そうです。期待値が一番高いのが中国で、2番目がブラジルです。
Q 香港企業も含めて中国企業ということですか。
A 中国企業が香港に設立した企業ということですね。なので、H株(中国国有企業株)とレッドチップ(中国本土系香港企業株)が有力です。
Q なぜマークさんはH株に魅力を感じていらっしゃるのですか。
A なぜならH株はアジア向けに50〜60%のディスカウントがあるからです。
Q 中国経済とインド経済の世界における位置づけをどうとらえていますか。
A 世界経済という視点から見れば、この2カ国もアメリカやヨーロッパでの経済混乱の煽りを受けています。おそらく例外的な国はないでしょう。しかし、この2カ国の国内経済は巨大なものであり、潜在能力も測り知れませんので、この嵐を見事に乗り切ってくれるでしょう。なにはともあれ国内需要がとても巨大なのです。
Q ロシアにも同じような見方ができるのでしょうか。
A ロシアの場合は、よりコモディティーに比重が置かれます。ロシアにもよい消費者マーケットがありますが、中国やインドほど大きくはありません。消費の勢い回復がロシアを立ち直らせてくれるでしょう。
Q 同じようにコモディティーに比重を置くブラジルにも同様のことが言えるのでしょうか。
A ブラジルはコモディティーだけではありませんよ。健全な国内消費者マーケットと企業、銀行、一次産業が均衡を保っているのです。
(訳文:WorldInvestors.TV/段魏男)
|