1987年に開催されたリアルマネーのトレード競技会で、わずか1年間で1万ドルを100倍以上にした伝説のトレーダー、ラリー・ウィリアムズ。その驚異的なパフォーマンスは、優れた売買システムに加えて、資金管理が深くかかわっていました。
当時、ラリーはブラックジャックなどの最適リスク計算法で知られる「ケリーの公式」をもとにトレードしていましたが、その資産曲線は大きく上下に振れていました。あまりの資金の増減の激しさに「取引口座の何%をリスクにさらして良いのか」を助言したのが、オプティマル f を開発した数学者、ラルフ・ビンスでした。
彼がおこなったある実験があります。
博士号を持つ 40 人を対象に、勝率 60% で正の期待値を持つシステムでトレードゲームを行なった結果、40人中なんと38人もの人たちが損失で終わりました。その原因のひとつは、適切でないポジションサイジング。大きすぎるリスクをとったことでした。
1956年に「ケリーの公式」を発表したケリーは、 何回も繰り返し投資する人は、資金配分のノウハウを知る必要があり、 複利計算によるリターンに関心を向けるべきだと主張しました。確率論を武器に、実際のカジノで大金を稼いだ大学教授エドワード・ソープも、エッジがあるときだけ勝負する「ケリーの公式」を活用したことで知られます。ソープ博士が1969年に立ち上げたヘッジファンドは、その後19年間で14.78倍のリターンをあげました。当時のジョージ・ソロスやウォーレン・バフェットにも及ぶ運用成績ですが、驚くべきはリターンの変動幅が4%と小さく、資産曲線がなめらかに右肩あがりだったこと。市場平均よりもはるかに安定的なファンドだったのです。
S&P500に15年連勝したヘッジファンド運用者、ビル・ミラーは、2003年に「ケリー基準(投資比率)は、資金運用に必須のものだ」と書いています。
一方で、金融論の古典的な研究にたずさわってきたノーベル賞受賞者の中には「ケリーの公式」を誤りだと断言する学者もいます。 『新版 魔術師たちの心理学』によると、一流大学の MBA、博士号、さらにウォール街の金融機関でトレーダーになるための研修で、ポジションサイジングやトレード心理を教育することは稀だといいます。ノーベル経済学賞を受賞者をむかえ年40%という驚異の運用成績をあげながらも破綻してしまったヘッジファンド LTCM。また、大恐慌で巨万の富を築いたあとに4度の破産を経験した投機家ジェシー・リバモアが、もし資金管理を重視していたとしたら、ひょっとして破産は免れたかもしれません。
多くの人が「必勝システム」や「大化け銘柄」などに注目する一方で、どこか地味な存在の「資金管理」。
たとえば、元本10万円を1年で2倍にする売買法で検証してみましょう。
同じ売買法で、取引口座の何%の額でトレードするのか、ポジションサイジングだけを変えて検証してみます。
売買システムも、初期資金も、市場も、トレード回数も同じ。
変えるのは、ポジションサイズを決める「オプティマルf」の数値だけです。
12倍のリターン。
最適なポジションサイズで
激しいドローダウン。
50回もトレードしないうちに
先述のラリー・ウィリアムズが実践したのが、まさにこの
ちょっと儲けた次の年にはちょっと損をし、
そんな方は、自分に最適な オプティマルf を知ることで、大きく飛躍する可能性があるでしょう。 トレーダーが厳しいマーケットで生き残る秘訣として、成功者が異口同音に口にする「マネーマネジメント」「資金管理」「ポジションサイジング」。彼らの言葉を見てみましょう。
資金管理が出来ていなければ、決して大きな勝利を手にすることがなく、ある場面で少し勝ち、ある場面で少し負ける、という二流の投機家で終わってしまう。
将来を感知するのは、困難だ。しかし、私たちは学習することで負けをコントロールでき、勝ちを伸ばすことができる。(全文を読む)
ポジションサイジングとトレード心理は、マーケットで成功するために不可欠な2大要素である。しかし、ウォール街、投資業界、学術界では重視されていないのが現実である。
重要なのは、何に投資するかを決めることではなく、「どれくらい」投資するかを決めることなのである。
正しいポジションサイズを知っているのと知らないのとでは、パフォーマンスに大きな違いが出る。良いトレーディング機会が訪れたときにそれを最大限に活用するには、どういったときにポジションサイズを増やし、減らせばよいのかを知ることが大切だ。
「汝の有り金全部をリスクにさらすなかれ」というのがトレーディングの第一ルールです。
「モダン・ポートフォリオ理論」と呼ばれる考え方に真っ向から挑戦するラルフ・ビンス氏。ポートフォリオ・リスクの概念に関して、新しい分野を拓いた人物です。個人トレーダーである成田博之氏が「最終的には、資金管理がトレーディングの全てだ」とする境地に達した訳は・・・(インタビューを聴く)
システムトレードにマネーマネジメントを取り入れることは非常に重要です。
自身の資金規模にあった最適なトレード枚数があるはずです。マネーマネジメントをおろ
そかにして投資で勝つことは不可能といえるでしょう。 (全文を読む)
短期トレーダーのゲームの本質とは、
1. 低いペイオフレシオ
2. 高い勝率
3. 1トレードあたりのリスクの相対的大きさ、
に絡める事ができる。 3 は、別の言葉で言えばポジションサイズ、ということである。 (全文を読む)
トントンの戦略でもリターンは最大化?
〜オプティマル f の不思議〜
実際には私たちのトレードにどう影響を及ぼすのでしょうか?
図1 オプティマルf がやや小さい
さらにポジションサイズを大きくすると… →
図2 オプティマルf が適正値
なんと 120倍 に急成長。
図3 オプティマルf がやや大きい
これは耐えられそうもない…。
図4 オプティマルf が大きすぎる
リスクをとりすぎて、ついに破産。
この結果から、図2のように
少額を大きく増やすとき、最適な資金管理が欠かせない
ことがわかります。
優れた売買システム×資金管理=最大のリターン でした。
また図4のように、リスクをとりすぎると
資金の減りも大きくなり、破産確率が高くなってしまいます。
自己資金でトレードする個人投資家が絶対に避けなければいけないパターンです。
また、最適なポジションサイジングは、売買システムによって異なります。
つまり、トレーダーひとりひとりに最適な値があるのです。
大きく儲けたあとで大きく損をしたり、
いつまでたってもトントンから抜け出せない。
資金管理の大家、ラルフ・ビンスが10月23日に来日します。
なかなかない機会なので、日本国内のみならず、周辺国のトレーダーからもお問い合わせをい
ただいています。
トレーダーが語る資金管理
『新版 魔術師たちの心理学』より
『高勝率トレード学のススメ』より
『投資苑』より
こんな方にお薦めです
資金管理に役立つ参考書