日経平均株価の3月末の終値は、12,525円54銭でした。これは、2007年3月末の
終値17,287円65銭から、4,762円11銭、率にして27.5%もの大幅な下落でした。
また、業種ごとに株価をみると、不動産業の株価は、昨年の夏ごろから、もの
すごい勢いで下落をしました。半年で株価が2分の1、3分の1にまで下落して
いるは当たり前の状態です。
不動産市況の悪化が顕著になってきたのは昨年終わりごろからですが、株価を
見る限り、その兆候は昨年の夏ごろから起こっていたことが分かります。
ところで、株価が大きく下がってくると、「そのまま保有すべきか」、「損を
覚悟で売却すべきか」、迷ってしまう個人投資家も多いことでしょう。
こんなとき、よく言われるのが、「投資したときの前提条件が崩れていない限
りは保有する」というものです。投資先の企業の株価の下落の原因が、銘柄の
個別の影響ではなく、市場全体の株価下落によるものならば、そのまま保有し
続けるという判断になります。
例えば、業績が好調で、毎期増収増益を続けていたある不動産会社X社の株式
を昨年の夏ごろ取得したとしましょう。
この場合、「毎期増収増益を続けており、今後も成長が見込まれる」というの
が取得の理由です。したがって、「毎期増収増益を続ける」というのが、この
銘柄に投資する前提条件であり、これが崩れた場合には売却をしましょう、と
するのが一般的な考え方です。
ところが、株価は、企業が業績発表や、業績予測の修正をするよりかなり前か
ら、すでに反応していることが多いのです。
上の例でみれば、X社が、業績予測を下方修正し、「毎期増収増益」という前
提条件が崩れたときには、株価はすでに投資時点の2分の1、3分の1にまで
下落しています。「時既に遅し」です。
そこまで株価が下落する前に、業績の下方修正が発表される前の段階で、X社
の業績が予想より悪そうだと気付くことができなかったのでしょうか。
よほど不動産市況に詳しい人であれば、それも可能だったでしょう。しかし、
一般の人々に、不動産市況が急速に悪化しているというニュースが入ってくる
のは、実際に悪化し始めてからかなり時間が経った後です。その頃にはすでに
株価はかなり下がっています。
しかし、株価の動きを最大限信頼するのであれば話は別です。株価が下がり始
めた時点では、ほとんどの人は、不動産市況がこれほど悪化するとは思ってい
ませんでした。ですから、株価が下がっても、「一時的な調整」としか受け取
らなかったのです。
でも、例え頭の中では「一時的な調整」と思っていたとしても、実際に株価が
下落し続けているのであれば、株価の動きを尊重すべきです。傷口が深くなら
ないうちに、一度売却するのです。その上で今一度冷静になって判断し、やっ
ぱり一時的な調整と思えば再度買いなおせばよいだけのことです。
株価が大きく下がってから「そのまま保有すべきか」、「損を覚悟で売却すべ
きか」迷っても、もう遅いのです。
株価の動きは将来を暗示します。「景気が良い」と皆が思っていても、株価だ
けは下落を続けていたならば、どうでしょうか?・・・筆者なら、株価を信じ
て、一旦売却してしばらく様子をみます。そうすれば、少なくとも、今回の急
落のように、持ち株が軒並み2分の1、3分の1まで下落し、さらに景気の減
速が明らかになって株価の反発も当分見込めない、というような事態に陥るこ
ともなくなるのですから。