先日、トヨタが2009年3月期の業績予測の下方修正を発表しました。営業利益の下方修正幅は驚愕の1兆円に達しました。下方修正後の営業利益予測は6,000億円、今年の上半期(4−9月期)ですでに6,000億円弱の営業利益をあげているので、下半期の営業利益はほぼプラスマイナスゼロにまで落ち込むことになります。さらに、単体では下半期は営業利益が1,000億円以上の赤字に陥る見込みです。
この「トヨタ・ショック」により、減益発表翌日のトヨタ株は一時ストップ安にまで売り込まれました。
さて、トヨタといえば、日本を代表する優良企業であり、毎年莫大な利益を計上しつづけていました。さらに、2008年3月期までは増収・増益を続けてきましたので、優良企業であり、かつ成長性も期待できる、として個人投資家の間でも非常に人気の高い銘柄です。
そのため、トヨタ株の株価が8,000円台から下げ続けているときも、多くの個人投資家は「あの優良企業のトヨタの株価が5,000円なんて安すぎる」「4,000円割れなんて大バーゲンセールだ」とひたすら買い続けました。ところが、株価はついに3,000円割れにまで達してしまいました。それからしばらくたたないうちに、「1兆円営業利益下方修正」の発表がなされたのです。
「トヨタ=優良企業」と盲目的に信じている投資家は、株価が8,000円台から3,000円割れに至るまでの下げ局面で、買いに走りました。しかし、株価が下がるのには理由がある、ということを知っている一部の投資家は、下落途中であるトヨタ株には決して手を出しませんでした。
つまり、トヨタの1兆円下方修正という実態を、すでに株価は織り込んで動いていたのです。
株価をみなくとも、最近の為替レートの円高、海外の景気悪化といった現状を踏まえれば、2008年3月期の決算発表時(2008年5月時点)での予測に基づく今期(2009年3月期)の業績予想を達成するのは到底不可能であることは明らかでした。
株価はこうした事実もすべて織り込んで動くため、株価を観察するだけでもその会社の業績が良いのか悪いのか、高い確率で判断することができます。
では、トヨタの1兆円減益発表をふまえ、個人投資家としてどのようなことに注意すべきか、筆者なりにまとめてみました。
- 優良企業がいつまでも優良企業と思わないこと
- 過去何年も大幅な黒字を計上している会社が、今年も黒字だろうとは決め付けないこと
- 株価が下落しているのには何かしらの理由があることを理解すること
- 株価が下落している途中で、割安感だけを頼りに買わないこと
- 当てにならない業績予測の数字より株価の動きを重視すること
これらのことを心に留めておけば、「あの優良企業のトヨタの株価がこんなに下がったのだから断然買いだ」と飛びつくことなく、大失敗を避ける投資行動ができるはずです。