世界中の株式市場が世紀の大暴落を演じた10月、アメリカの著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が「私は今株を買っている」と新聞に寄稿したことが話題になりました。
この発言が報道されたとたん、アメリカのニューヨークダウ株価指数は一気に数百ドルも上昇したことからも、バフェット氏の発言や行動に対する株式市場の影響力が相変わらず大きいことを再認識させられました。
そして、このバフェット氏の発言は日本でも話題になり、多くの個人投資家が「あのバフェット氏が買っているんだから今が買いのチャンスだ」として、下げ相場の中果敢に買い向かったのです。
このことは、10月の投資主体別売買動向にて、個人が1兆円近くの大幅な買い越しであった事実からも明らかです。
しかし、筆者はいくら今まで成功を続けている著名投資家が「今は買いのチャンスだ」と言ったとしても、盲目的にそれを信じて個人投資家が買いに走るという行動には、非常に危機感を感じます。
なぜなら、今までいくら輝かしい成功体験を有している著名投資家であっても、今後も同じように成功する保証は全くないからです。
仮に、バフェット氏の今回の「買い」が失敗に終わったとしても、彼は今までの成功で巨万の富を得ていますから、壊滅的なダメージにはならないでしょう。
でも、バフェット氏に追随して「勝負」に出た、資金力に乏しい個人投資家が失敗すれば、大きな痛手を被りかねません。
長年相場の世界で生き残ってきた投資家の多くは、「天井売らず、底買わず」を実践しています。決して「株価が下がったから買う」のではないのです。
株価が下がっていくら魅力的な水準に思えたとしても、下げ止まって反転上昇に転じるまでは決して手を出すべきではありません。
「長期投資」を標榜する、ある独立系投資信託の代表は、「今が絶好の買いチャンス」と相変わらず叫んでいます。その人は、1年以上前、日経平均株価が15,000円以上だったときも同じように「今が絶好の買い時」と言っていました。
株価が下落している局面で、ずっと「今が買い時」と言い続けていればいつかは当たります。しかし、そんな戯言に我々個人投資家が付き合っていたら、資金が持ちませんし、買った株は塩漬けになるばかりです。
株価が下がるのには理由があります。経済情勢、国際情勢など、私たちが思っている以上にこれから悪化していくことを株価は教えてくれているのかもしれません。
「株価が安い=買い」ではなく、株価がなぜこれほどまで下落するのかを自分自身でよく吟味した上で、かつ株価が下げ止まって上昇基調に転じるのを確認してから買うようにする、これが今の相場で大きな失敗を避けるために必要なことです。