長期的に業績の向上が期待できるような優良銘柄を探し出したとき、「今すぐ
にでも買っておきたい」と思うのが投資家の心情です。しかし、そんなときは
冷静にその銘柄の株価の動きをチェックすることが重要です。なぜなら、どん
なに良い銘柄であっても、買うタイミングが悪ければいつまでたっても儲から
ないどころか損をしてしまうからです。
買いのタイミングを計るのは確かに難しいですが、少なくとも「買われすぎの
状態で買わない」、「株価の下落途中で買わない」という2つを守りさえすれ
ば、大きな失敗は避けられます。
「買われすぎの状態」は、株価チャート(ローソク足)の形状や、移動平均線
からの上方乖離率で判断します。例えば、大きく上昇した後に長い上ヒゲを付
けた場合や、移動平均線から何十%も上方に乖離している場合などは、株価が
下げに転じる可能性が高いです。こんなときにわざわざ買う必要性はありませ
ん。
「株価の下落途中で買わない」というのは、バブル崩壊後の株価の動きを見れ
ばお分かりいただけるでしょう。例えば2006年1月の「ライブドアショック」
の後は、いくら業績がよいものであっても、「新興銘柄」というだけで大きく
売り込まれました。「高値から3分の1になったから」といって安易に手をだ
すと、そこからさらに大きく下落してしまいます。下落がおさまるまでは、手
を出してはなりません。
ではどんなタイミングで買えばよいのかといえば、例えば「下落していたのが
上昇に転じた時」です。上昇途中の銘柄であれば、一時的な下落でいわゆる
「押し目」を作った後、再び株価が反発したときとなります。
ただ、買いのタイミングが良かったのかどうかは、残念ながらしばらく後にな
ってみてからでないと分かりません。「買われすぎの状態」であっても、さら
に上昇することもあるし、「下落していたのが上昇に転じた時」に買っても、
再び下落してしまうこともあるからです。
買いのタイミングに「絶対」というものはありません。買うと失敗する可能性
の高いタイミングをできるだけ外し、買うと成功する可能性の高いタイミング
で買うことで勝率を高めるしかないのです。その上で、もし買った後で株価が
下落していったならば、「損切り」を行って、次のチャンスが来るまで待つの
が、大失敗をしないためには必要です。逆に言えば、損切りができるのであれ
ば、上昇途中で飛び乗って買ってしまってもよいのです。
筆者が監査役を務める株式会社マーケットチェッカーで提供
している「マーケットチェッカー」は、東証上場銘柄について、目先の天井や
底値の可能性が高い銘柄、あるいは買われすぎや売られすぎの銘柄を各種テク
ニカル指標でスクリーニングして一覧表示します。
例えば、ある銘柄に投資しようかどうか検討しているような場合、移動平均線
からの乖離が大きくないか、あるいは株価に長い上ヒゲが出ていないかどうか
を確認して、「買うべきではないタイミング」かどうかを判断することができ
ます。
もちろん、テクニカル分析を重視した逆方向からのアプローチも可能です。
移動平均線から大きく下方に乖離している銘柄や、株価に長い下ヒゲが出てい
る銘柄をピックアップし、その中から銘柄を選んで株価のリバウンドを狙う、
という使い方もできます。
個人投資家の多くがバブル崩壊で痛手を被ったのは、高値で買ってしまったか
らではありません。高値で買った後に損切りせずに持ち続けてしまったからな
のです。次回は大失敗しないために必ず身に付けなければならない「損切り」
の仕方についてお話しします。