最近はあまり多くは見かけなくなりましたが、少し前までは、書店の株式投資
のコーナーには、「株で○億円儲けた」とか「1年間で○十倍に増やした」と
いった景気の良いタイトルの本が並んでいました。
では、こうした本のように、短期間で何億円にもしたり、1年間で資金を何十
倍にまで増やすことは可能なのでしょうか?答えは「可能」です。
例えば、2003年から2005年にかけての新興市場の銘柄の値上がりには目をみは
るものがありました。 100億円の給料をもらったファンドマネージャーの話を
ご記憶の方も多いと思います。そのファンドマネージャーも、本人の実力だけ
でそれだけの成績をあげられたのではなく、新興市場大幅上昇の恩恵を多大に
受けているのです。
2003年のはじめに200万円の投資資金があったとしたら、それを2005年までの
3年間で1億円(50倍)まで増やすことは、実はそれほど難しくありませんで
した。
その方法は単純です。新興市場株を資金目いっぱい買って、さらに買った株を
担保に信用取引でさらに新興市場株を枠いっぱいまで買います。そして、当初
の資金で買った新興市場株が値上がりすることによって、担保価値が上がりま
すから、信用取引枠が増えます。そこで、さらに新興市場株を買い増すのです。
このようにすれば、当初の資金の何倍ものレバレッジが効いた状態になります
ので、株価が上がれば上がるほど、加速度的に利益が増えていく、という図式
です。
さて、年が明け、2006年になると、2005年までとは逆に、年初の「ライブドア
・ショック」を皮切りに、坂道を転がり落ちるように新興市場株の株価が下げ
続けていったのです。
2005年まで大儲けをしていい思いをした個人投資家の多くは、それまでと同じ
ように、現物買い+信用取引という、同じ投資スタイルをとり続けていました。
その結果、2005年までとは全く逆の流れで、株価が下がれば下がるほど損失が
膨らみ、場合によってはそれまでの利益を吐き出すだけでは済まずに、信用取
引の損失を穴埋めできず、多額の借金が残った投資家もいました。まさに「天
国から地獄へ真っ逆さま」の状況です。
現物取引に信用取引を組み合わせることで、レバレッジを大きく効かせて大勝
ちを狙った投資手法は、ツボにはまれば莫大な利益をもたらします。ですから
運がよければ一時的には大勝ちできることもあるでしょうが、いつまでもその
方法を続けていると、いつかは大負けして全財産を失うことになるのです。
投資に回せる資金が少ないうちは、失敗したときに失うお金も相対的に少なく
済みますから、多少無理しても大勝ちを狙って短期間に資金を増やしにいくの
も作戦の1つです。しかし、ある程度資金がたまったら、いつまでも無理をし
ないで、大勝ちはしなくとも、大きく負けないような方法(資金の一部はキャ
ッシュで残しておくとか、多額の信用取引をしないなど)に変えていかなけれ
ば、あっという間に一文無しになってしまいます。
「大勝ち」と「大負け」は紙一重です。大きく上昇した後は大きく下落するこ
とが非常に多いものです。運よく「大勝ち」をした後は、さらに儲けてやろう
と欲張るのではなく、「大負け」をしないように慎重になるべきなのです。