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第12回 いよいよ大相場に発展するのか。商船三井・日本郵船の株価2021.9.6 <著者プロフィール> 浜口準之助(はまぐち・じゅんのすけ) 約15年にわたり機関投資家のファンドマネージャーとして株式運用に従事。信託銀行などで主に年金資金の日本株運用を行う。その後約14年にわたり投信運用会社にて投資環境のセミナー講師に携わる傍ら個人投資家として株式運用を行い、「億り人」の仲間入りを果たす。「浜口流コア・サテライト戦略」を提唱し自らも実践している。「醍醐味に満ちたライフワークとして、株式投資に勝るものなし」との基本観から、個人投資家に実践的な株式投資手法の研究を続けている。 社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『黄金サイクルと農耕民族型投資戦略』(パンローリング刊)、ブログ 浜口準之助のテツ・ホテル・グルメ・株式運用 をほぼ毎日更新中、こちらでは旅の話もしている。
まずは前回の当ブログのアップ日(2021年8月23日)以降の「浜口流コア・サテライト戦略」下記2つの図、上は株価が8月20日時点、下はその2週間後、株価が9月3日時点のデータです。前回の当ブログで「急騰後、ここ三日については一転、急落」とした商船三井・日本郵船の株価(以下、両銘柄の株価と記す)は、その後再度急騰、ここもとの新高値となりました。両銘柄のここ一か月の日足も載せておきます。
両銘柄の株価急騰は、8月半ばに有力アナリストが相次いで強気のレポートを発行したことが背景にあると思います。株価は両銘柄とも当面、一万円前後への上昇が期待できると考えます。後ほど詳しく説明します。 それ以外の銘柄も総じて好調です。特にコア銘柄である三菱商事(8058)はここもと趨勢的に上昇し、過去2年間の中で最高値となっています。素材・資源価格の上昇、米国の景気回復期待等が背景にありますが、喜ばしいことです。この中で唯一、JAL(9201)の株価が冴えません。国内で新型コロナ感染者数が増加、緊急事態宣言の時期も8月末から9月12日に延長されたことなどが背景にあると思われますが、これまでにも書いていますとおり、私はこの点について、大きな問題とは思っていません。 当ブログで披露している投資環境見通し、相場観に大きな変化がないからです。今後の見通しについては、景気敏感バリュー株は時間の問題で底打ち、上昇に転じるという見方に変化はありません。従い、ここに掲載している銘柄群については、基本、継続保有で問題ないと考えます。
上のグラフは8月20日時点、下はその2週間後、株価が9月3日時点のデータです。 9月3日時点で商船三井の株価は8,450円、一方で日本郵船は8,940円と、株価の単純比較では830円ほど490円ほど郵船が高い状況です。前回と比較して、両銘柄のさやは390円縮小していることがわかります。この理由として、9月中間配については、商船三井の方が額が大きいこと(通期では日本郵船の方が大きい)、前述した8月に発行されたアナリストレポートの中で、商船三井の方がより割安としたレポートが先行して発行された点が大きいと考えます。 私は現在は、「商船三井ロング・日本郵船ショート」ポジションは持っていません。今後、どうするのか。これは前回・前々回のブログでも書いているのと同じ意見ですが、さやの方向次第では、この「商船三井ロング・日本郵船ショート」ポジションを再度仕掛けたいと思っています。しかし足元では、両銘柄とも強烈な上昇相場の渦中にあります。さや取りよりも片張りの方が取れそうとの相場観に加え、現状では両銘柄のさやの方向性が見いだせないため、この戦略は様子見としています。 なお、グラフは過去3カ月の商船三井と日本郵船の株価を示したものです。グラフは日経SmartChartPLUSを用いて、概ね、重なるように作っています。 (日経SmartChartPLUS)
あらためて書くまでもなく、海運株はここもと大きく上昇しており、日本株全体がさえない中、「野中の一本杉」的な存在になっています。Twitterでも、「注目のキーワード」に商船三井・日本郵船が登場するなど、市場での関心事が急速に高まり、その結果、普段はこのジャンルに見向きもしない投資家の資金も入ってきていると思われます。喜ばしいことです。 今後の両銘柄については、以下の展開になると考えます。
本件の詳細をここで書くと、長くなりそうです。私のもう一つのブログ記事で詳しく説明していますので、こちらも併せてお読みください。 まずは
そして
9月1日の日経朝刊記事、日本郵船調査グループ長さんのコメントが注目されます。曰く、 ここまで突き抜けた運賃は経験ないと。これは2007年の海運株の大相場、商船三井でいえば高値20,400円、郵船で言えば同12,760円の時よりも、海運運賃が「突き抜けている」という意味です。両社とも、ここまで高水準の運賃を想定し業績見通しを出してはいないでしょうから、再度の業績修正の可能性は、低くはないと考えます。 なおご参考まで、海運の運賃指数はバルチック海運指数が有名ですが、これは鉄鉱石・石炭・穀物などの乾貨物(ドライカーゴ)を運搬する外航不定期船の(いわゆるばら積み船)の運賃の総合指数のこと。 今回の両銘柄の好調さは、コンテナ部門がもたらしているので、バルチック海運指数ではなく、Freightos Baltic Index(FBX):グローバルコンテナ貨物指数(https://fbx.freightos.com/)を見るべきです。この指数をみると、過去2年間でコンテナの運賃は7倍近く上昇していて、かつ高止まりしている状況が見て取れます。繰り返しですが、商船三井・日本郵船とも、コンテナの運賃は夏場以降やや下落するとの前提で今期決算見通しを作成していると思われますので、この運賃の高止まりは良い意味で想定外、3度目の上方修正があっても不思議ではないと思われます。 さて、今後の海運業界について、JPモルガンの姫野アナリストは、氏の2021 年 8 月 27 日付け「海運Q1レビュー『年内神風、年明け追い風』」の中で、こう語っています。 (投資対象としては)引き続き海運を選好したい。新型コロナが長引けば供給のタイト感が継続、収差おくすれば世界経済回復・ベース需要拡大と、どちらのシナリオでもアウトパフォーム余地がある。 姫野氏のこのシナリオ、そして『年内神風、年明け追い風』という表現に共感します。海運株の株価パフォーマンスはここもと好調で、その好調さは来年3月ぐらいまでは続くのではないかと考えます。その時にいくらになっているのか。それはこれまで書いてきた通り、両銘柄とも一万円以上、そしていずれ、2007年の高値を意識する水準になるんじゃないか。そう考えます。 最後に、これは日経モーニング+で、豊島キャスターがコメントされてた時に使われていたフリップです。経験則では、総選挙になると外人投資家が日本株を買ってくる。これは野村証券のストラテジスト池田さんが作成した資料と言う事ですが、こんな説明をされていましたね。
総選挙は買い。理由は外人投資家が買ってくるから・・・ということは広く言われていることではありますが。こういった形でデータにしてもらえると、説得力がありますし、再確認できますよね。今回も相応に期待できると考えます。 さて、菅首相が出馬せずとのニュースが流れました。驚いたし、個人的には残念でした。私は菅首相のファンでしたもので。しかし、これが現実。今後の株式市場はどうなるか。 日本株は日経平均で言って、総選挙は一声、まずは3,000円の上昇と言われています。今回もそうでしょう。理由は、今後の政策期待。まずは期待で上がり、その後に出てきた政策が適切でなければ、株価は下がる。逆に現実味・有効性があれば上昇が続く。そんな繰り返しです。この上昇を先導するのは、さきほど書いた外人投資家の可能性があります。さて相場全体が上昇した場合、海運株はどうなるか。 基本的に海運株の上昇トレンドは変化ないものの、一時的に物色対象が他の出遅れ銘柄に変わり、アンダーパフォームする可能性はありますね。海運株を売って、より出遅れている銘柄に資金がシフトされる、そんなシナリオです。一時的にですが。 しかしこれまで書いてきたように、9月末の中間配は大きな額が待ってるし、9月から10月にかけ、再度業績の上方修正期待できることから、当面継続するであろう総選挙相場の陶酔が一旦終わった後は、再度好材料・好業績銘柄が物色対象となり、海運株は新高値へ。そう考えています。 以上です。今回はこの辺で。みなさんの株式運用の参考になれば幸いです。 なお皆さんの株式運用は、くれぐれも自己責任でお願いします。ここは強調させていただきます。 キーワード検索: #高配当 #景気サイクル #株式サヤ取り |
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