マクロ経済と聞くと、ニュースで時折耳にするGDP、金利、為替といった単語を
思い浮かべるものの、では具体的に株式投資にどう活用したらよいかと考えると、
つい難しく思えてしまう。
しかし、マクロ経済は企業業績に大きな影響を与えるので、
マクロ経済の知識は株式投資にとって必要不可欠なものの一つだ。
本書は、マクロ経済知識の重要性を感じつつも、
どのように株式投資に活用したらいいか分からない投資家にとって
非常に有用な書籍と思われる。
本書のスタイルは、タイトルを見ても分かるとおり、決して堅苦しいものではない。
本書では、「インフレーションの虎」、「財政赤字のドラゴン」など、
マクロ経済に関する用語一つ一つにニックネームをつけながら、
マクロ経済の本質を平易に解き明かしている。
また本書はスタイルだけでなく、中身にも十分な配慮を施している。
個人投資家が日々直面しそうな事件を数多く取り上げながら、
マクロ経済の知識でいかに対処すべきか、
またマクロ経済に関するデータ・ニュースが、
いかにして株価に反映されるかなどについて
分かりやすくかつ実践的に書かれている。
こうした点から、本書は、マクロ経済に関する知識がない投資家、
もしくはマクロ経済は難しいと思い込んでいる投資家、
そして株式投資で成功したいと強く願っている投資家ほど、
適している。
一つだけ残念なのは、本書で取り上げられている具体例のほとんどが
米国株に関する点だ。
もともと本書は、米国で出版されたものであるため、
仕方がないといえばそれまでだが、本書を読み終えると、
マクロ経済と日本株の関係についても、つい気になってしまう。
マクロエコノミストの一人として、また個人投資家の一人として、
マクロ経済による日本株投資について、さらに数多くの書籍が
世に出ることを期待している。