本書の著者は、最近メジャーになっているウォーレン・バフェットの師匠として紹介されることが多いが、著者は米国投資界において伝説的な存在であって本書も版を重ねているのである。日本において、投資信託が徐々に脚光を浴びる中、中長期投資と分散投資の重要性が語られており、もちろん投資教育の第一歩としてはそれでよいのであるが、本書に「代表的な上場銘柄を買持ちにすれば、だれもが市場平均と同等のパフォーマンスを挙げられる可能性があるので、平均を上回るのは比較的容易なことのように思われるかもしれない。しかし現実には、それを試みて失敗する賢い人々の比率は驚くほど高いのである。経験豊かな投資信託会社でさえ、その大部分が長年にわたって市場平均以下のパフォーマンスしか上げていない。………」とあり、単純な分散投資では市場平均すら上回れないという現実が待ち構えているのである。
本書は単純な分散投資ではない投資方法を示唆しているので、大いに参考になるのではないのでしょうか。その一つの示唆として、「企業の有形資産価値を大幅に上回る価格の株には手を出すな………」とある。つまり、PBR(純資産倍率)の高い銘柄は買ってはいけないということで、期待成長率の高いグロース株への投資を戒めているのである。
この本に欠けている視点が残念ながら一つだけある。それは国際分散投資の視点である。それは著者が米国人だからである。米国人にはほとんど国際分散投資のニーズはないと言えばモダンポートフォリオセオリーから考えれば遅れているのであるが、基軸通貨国である米国には必要性はなかったのでいたしかなかったといえるが。
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