相場関係の本ではないが、現物市場に少なからず影響を与える金融派生商品の入門書として推薦したい一冊である。これから金融を学びたいと考えている学生にとっても、分かりやすい内容となっている。 勿論、専門的なところはそれなりにきちんと説明されており、決して単純な教科書で終わってないことも付け加えておきたい。
スワップマーケットに10数年携わった者として、この本は単なる入門書というだけでなく、東京市場の金融の変遷を思い起こす上でも、とても参考になる本だと思う。更に、金融工学の限界という点に言及していることを、個人的には高く評価したい。これが数多く出版されている金融工学関係の書籍とはっきり異なる点である。
著者である倉都氏は、決して一方的な金融工学批判するのではなく、業界全体が時として技術優先に走り忘れがちな社会科学の重要性や人間哲学といったものを問いかけていると思える。
倉都氏は本文の終わりで、”金融工学は自然科学ではなく、れっきとした社会科学の一員であることをまず再認識した上で、それが実用に資するためには、どこにどんな足場を築くべきなのか、もう一度初心に返って考えてみることも必要ではないかと私は思っています。”と述べているが、業界に関わった者だからこそ言える言葉だと思うし、心から共感するものである。
デリバティヴ悪者論が多く語られる昨今、善悪を論じる前に是非読んでいただきたい一冊である。
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