投資関連の書籍はゴマンとあるが、本書は、一貫した投資哲学に基づき、論理的かつ幅広い教養と良質な情報に裏付けられたストーリーを用いて、海外投資の初心者にも分かりやすく書かれた数少ない良書の一つと言える。
テーマは、「金融2.0」。
フリーターがクリックひとつで膨大な富を得たり、ごく普通の主婦がヘッジファンドと同様の取引を行い何億円も儲けたりする光景を、「金融2.0」という革命のささやかな余波に過ぎない、と指摘する。
その先にあるものは?
個人もマネーのように自由に国境を越えられるようになり、海外移住と海外投資とを組み合わせた人生設計が人生の選択肢を増やし、豊かさを最大化するための有効なツールであると結論付ける。
これは、長期的なスタンスで海外投資を捉え、日本の居住者である期間に海外投資で資産を運用し、リタイヤ後に海外移住(永住する必要はない)、非居住者となったタイミングで資産を売却する、という非常にシンプルで効果的な「海外投資の出口スキーム」が前提となっている。
そして、私たちの足元でいま起きているとてつもなく大きな地殻変動に気づいている人は驚くほど少ない、と締めくくる。
国際相続・国際税務の研究をライフワークにする評者にとって、本書は、『マネーロンダリング』(幻冬舎)、『永遠の旅行者』(幻冬舎)に続き、貴重な研究資料となっている。
次はどんな秘策が出てくるのか、今からとても待ち遠しい。