本書は相場界の「空手バカ一代」である。「空手バカ一代」は、大山倍達を素材に巧みに虚実混合した梶原一騎独特の手法で描かれたフィクションだが、世界の格闘技界に与えた影響は計り知れない。些細な虚実にこだわる輩に実力者なく、純粋に感動した者の中から、格闘技界に影響を与えた人材が数多く輩出した。良悪と虚実に相関はない。
大成するには、素直な気持ちが重要である。「素直」という要素は、一流と三流の大きな差の一つでもある。
『欲望と幻想の市場』も、エドウィン・ルフェーブルが、伝説の投機王ジェシー・リバモアを題材にした完全フィクションである。ただし、本書がなければ、相場の歴史が変わったかもしれないといっても過言ではなかろう。本書に感化された歴代相場師は多い。小説であると同時に格言集の要素も持つ本書から狭小な相場技術を学ぼうとしてはいけない。時代を超えた人間の性・魂を感じとって頂きたい。市場を形成するのはいつの時代でも人間である。その本質「心」を学ばずして「技」が身に付くはずがない。
『マーケットの魔術師』同様、読後に共感する事までは簡単である。そこから一歩踏み込んで行動出来るか否かが重要ポイント。
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