ベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』を読んだことで、私はプロのファンドマネジャーになりました。1987年の株式市場の暴落の直後に、顧客のアドバイスによって本書を読んだのきっかけです。それまでその本のことは聞いたことがなかったので、題名をメモして帰りました。翌日、その本を購入し、最初から最後まで一気に読みました。読み終えたとき、この本こそ、自分がずっと探していた本だと分かりました。
それまでの数年間、株式投資に取り組み、バリュー株の経験がありましたが、期待したほどの結果は得られていませんでした。しかし、本書を読んでからは、もう過去を振り返ることはありませんでした。それから、突如として、私の投資の成績は改善しました。分かりやすく正しい原則に基づいているこの本の長所は、投資家が何をすればいいのかを明確に書いている点です。数十年にわたって本書がずっと刊行され続けているのも当然のことだと思いました。
投資を考えている人やこれから投資をしようと思っている人ならだれでも、本書は最初に読むべき本だと思います。『賢明なる投資家』には、さまざまなバリュー投資のアプローチを紹介しています。そのアプローチとは、純資産価値との差、低PER、高配当、自社株買いなどです。要するに、『賢明なる投資家』は、「株が本来の価値からどのくらい安いのか」について書かれています。これは、資産から負債を差し引いた純資産額が時価総額よりも多い状況です。
https://www.tweedy.com/ の記事「投資で機能してきたのは何か(What has worked in investing)」を見てください。統計的な調査の宝庫で、世界中で行われているさまざまなバリュー投資のアプローチを紹介しています。
その一貫して上位にあるのが、割安株やネットネット株についてです。このバリューの手法については、私の最新作『実践 ディープバリュー投資』が出版される少し前に書かれました。私の著書では、グレアムの投資法の背景にある哲学を示しながら、成功例だけでなく、失敗例とその理由についても、特定の企業を例に読者に示しました。いわば投資プロセスの全段階(仕掛けから手仕舞いまで)について、一度ポジションを建てたら、投資がどう変化・発展していくかを詳細に書いています。
『実践 ディープバリュー投資』では、日本企業の三信電気に1章を割いています。世界中のどこでもこのバリューの投資戦略が機能していることの証拠だと思います。その国の株式市場が規則にのっとって運営され、投資家の権利が適切に守られているかぎり、この手法はどこでも、いつでも機能します。日本の投資家は日本国内の株式市場がそのような状況(バリュー銘柄があふれている状況)で、とても幸運に恵まれており、この投資手法を実践するのには最高の株式市場です。世界のどこの市場を見ても、定期的にこんなにもバリュー投資の機会を提供してくれるのは日本市場以外にありません。
私たちは2016年4月に三信電気に885円で投資し、2017年10月に1721円で売却して94%の利益を得ました。その前にも三信電気に投資のチャンスがあり、2014年7月から2015年9月にも49%の利益を上げました。最近まで日本アンテナを保有しており、似た上々の結果が得られました。日本市場は、ここ数年間でもバリュー投資先を探すのに最高の市場です。ぜひ『実践 ディープバリュー投資』を手に取ってみてください。